最初の総当たりで、いちばん強いシーマンは92%勝ち、いちばん弱いエンジェルは15%しか勝てませんでした。
シーマンの強さの元を探すと、種族の王の1枚が持つ「速さ+1」に行き着きました。
ゴーレムは反対に、自分の種族のカードを1枚抜くたびに強くなりました。
私が制作した『背界の旅団』は、カードを増やして種族が24になりました(その理由は「カードを2倍に増やした理由」)。好きな種族でデッキを組んだのに、相手が別の種族というだけで勝てないのでは、選ぶ楽しさがなくなります。どの種族を選んでも戦えるようにするために、何を測り、どう直したのかを書きます。
この記事で分かること
- 人の代わりにAIどうしを戦わせた:24種族の全部の組み合わせを、先手と後手を入れ替えて1万6千試合。
- カードを1枚抜くと、強さの元が見える:抜いて弱くなるカードが強さの元、抜いて強くなるカードは足を引っ張っています。
- 弱い種族は、誰かの苦手ならよい:全部の種族を同じ強さにはせず、下の種族にも役目を残しました。
人の代わりに、学習済みAIどうしを戦わせる
種族の強さを人の対戦だけで確かめるには、試合の数が足りません。24種族の組み合わせは、自分と同じ種族どうしを除いても552通り。先手と後手を入れ替えるので、その倍です。
そこで、学習済みAI(自分どうしで対戦を繰り返して、指し方を覚えたプログラム)を両軍に同じものを使い、種族ごとのデッキを戦わせました。各組み合わせを先手・後手それぞれ30試合、合計16,560試合です。デッキは、アプリが種族ごとに自動で組むのと同じやり方で、新しいカードを含む158枚から組みました。
先手の勝ちは49.9%で、先手と後手の差はほとんどありませんでした。数字は勝率で書きます(引き分けは0.4%だけで、半分の勝ちとして数えています)。
最初の結果:上と下で6倍の差
| 順位 | 種族 | 勝率 |
|---|---|---|
| 1 | シーマン(水) | 92.4% |
| 2 | カッパ(水) | 91.4% |
| 3 | スネーク(土) | 86.1% |
| 4 | リザードマン(水) | 77.4% |
| …… | …… | …… |
| 21 | トントゥ(光) | 25.2% |
| 22 | ビースト | 24.3% |
| 23 | ジャイアント | 15.9% |
| 24 | エンジェル(光) | 14.6% |
上位4つのうち3つが水の種族です。シーマンは、ほかの23種族のほとんどに勝ち越していました。
カードを1枚ずつ抜いて、強さの元を探す
種族が強い理由は、数字の表だけでは分かりません。そこで、デッキからカードを1種類だけ抜き、空いたところを同じ組み方で埋め直して、もう一度同じ相手と戦わせました。抜いて勝率が下がるカードは強さの元、上がるカードは入っているほど弱くなるカードです。1回の比較が690試合、合わせて約15万試合になりました。
- 抜くと大きく下がった:シーマン真珠王(シーマンが9.2ポイント下がる。上位の8種族が相手だと20ポイント)、カッパ沼大将・カッパ水術師・カッパ忍者(6〜8ポイント)、ヒドラ(スネークが8.8ポイント)。
- 抜くと上がった:ジャイアント・ビースト・ゴーレムのほぼ全部(フェンリルは抜くと18.1ポイント上がる)、ミノタウロスの生命力1のカード、エンジェルの多く。
差が4ポイントより小さいものは、試合数による揺れの範囲として扱いました。
王の強さの元は「速さ+1」だった
シーマン真珠王は、シーマン全員の速さを+1し、水のスペル枠(水の魔法を唱えるための枠)を1つずつ与えるロードです。速さは、戦闘でどちらが先に攻撃するかを決める数です。どちらの効果が強いのかを分けるため、3つの案を試しました。
| 案 | 真珠王の変え方 | シーマンの勝率 |
|---|---|---|
| 元のまま | — | 92.4% |
| A | レベル2にする(能力はそのまま) | 85.1% |
| B | レベル1のまま、能力を「速さ+1」だけにする | 88.1% |
| C | レベル1のまま、能力を「スペル枠」だけにする | 82.1% |
速さ+1を残したBは、ほとんど弱くなりませんでした。シーマンを支えていたのは、先に攻撃できることだったのです。ただ、Cでもまだ1位で、20種族に6割以上勝っていました。
そこで、能力は変えずに真珠王を重くしました。レベル2にし、戦闘中に手札から加わる「即時召喚」をできなくしました。あわせて、シーマンとカッパのレベル2の4枚からも即時召喚を外しました。強いカードを消すのではなく、出てくるまでに手間がかかるようにしたのです。シーマンの勝率は92.4%から56.8%(11位)まで下がりました。
直すたびに、別の種族が浮き上がる
上が下がると、その分だけ別の種族が上がってきます。シーマンとカッパを抑えると、今度はスネークが1位になりました。スネークではオロチとヒドラが強さの元だったので、オロチの生命力を5から3へ、ヒドラの生命力を4から3へと、少しずつ削りました。
下の種族は、上げました。エンジェルは生命力1の天使が多く、戦闘ですぐに倒れていました。生命力1の天使7枚をすべて2にした試算では、エンジェルの勝率は29.3%から45.7%へ上がりました。ミノタウロスは、相手の先頭しか狙えなかった能力を、好きな1体を狙えるようにしました。
1日のうちに、試算と調整を10回以上くり返しました。
弱い種族は、誰かの苦手ならよい
全部の種族を同じ強さにすることは、目指していません。ドラゴン・ジャイアント・ビースト・スピリットは、ほかの種族のデッキに混ぜて使う種族です。単独のデッキで弱くても、調整の対象にしませんでした。
残りの20種族のうち、下位(13位以下)の種族には「上位12種族のどれかの、いちばん苦手な相手であること」を求めました。強いデッキが流行ったとき、それに強い種族として出番があれば、低い順位でも選ぶ意味があります。たとえばドワーフはスネークの、ゴーレムはバードマンのいちばん苦手な相手です。
調整の前と後
| 測ったもの | 最初 | 調整を重ねた後 |
|---|---|---|
| 1位の勝率 | 92.4%(シーマン) | 73.1%(スネーク) |
| 20種族の最高と最低の差 | 77.8ポイント | 41.7ポイント |
| エンジェル | 14.6% | 31.4% |
右の列は、天使7枚の生命力を2にする前の計測です。その後の小さな調整(オロチの生命力3など)をすべて入れた形での総当たりは、AIの学び直しの後に測ります。
まだ分からないこともあります。デッキは機械的に組んだもので、それぞれの種族らしい勝ち方に沿った組み方ではありません。学習済みAIが、どの種族でも同じくらい上手に指せているかも分かりません。カードを変えた後のAIの学び直しも、これからです。最後は、人が遊んだ手触りで確かめます。
水の種族が強かったもう1つの理由、魔法の話は「魔法を全部抜いたら、16の種族が強くなった」に書いています。
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