マジック:ザ・ギャザリングでは、どんなに強いカードを持っていても、土地は1ターンに1枚しか出せません。
デュエル・マスターズでは、今は使えない重いカードを、そのまま「マナ」として場に置けます。
そして遊戯王OCGでは、レベル7以上のモンスターを出すのに、自分のモンスター2体を墓地へ送らなければなりません。
カードゲームの強いカードは、たいてい出すのに手間がかかります。この手間の大きさを、プレイヤーは「重い」「軽い」と呼びます。強いカードを集めれば強いデッキになりそうですが、重いカードばかりを入れたデッキは、たいてい勝てません。なぜ強いカードを詰め込むと弱くなるのでしょうか。そして、カードゲームはカードの「重さ」を、それぞれどんな形で払わせているのでしょうか。
この記事で分かること
- マナカーブは「いつ何を出すか」の設計図:コストごとに何枚入れるかの分布で、重いカードばかりだと序盤に何もできずに終わります。
- 重さの払い方はゲームごとに違う:マナを貯めて払うゲームもあれば、仲間のモンスターや、ポケモンを育てる番の数で払うゲームもあります。
- 時間ではなく「場所」で払うゲームもある:モンコレや『背界の旅団』では、土地に入れる強さの合計が重いカードの置き場を奪います。
マナカーブとは、コストごとの枚数の分布
マジック・ザ・ギャザリング(1993年にアメリカで生まれたトレーディングカードゲーム)では、呪文を唱えるのに「マナ」という力を払います。マナを生むのは主に土地のカードで、カードの右上に書かれた必要なマナの量が「マナ・コスト」です。コストが大きいカードほど強い効果を持ち、プレイヤーはこれを「重い」と呼びます。
デッキのカードをコストごとに数え、1マナのカードが何枚、2マナが何枚と並べてグラフにすると、山のような曲線ができます。これが「マナカーブ」です。マナカーブを整えるとは、軽いカードと重いカードの釣り合いを取ることです。
マジックの公式サイトには、この考え方の土台になる一文があります。毎ターン、出している土地の数と同じコストの呪文を唱えられれば、毎ターンその時点で一番強いカードを使っていることになる、というものです。1ターン目に1マナ、2ターン目に2マナ、3ターン目に3マナ。手元のマナを毎回使い切ることが、マナカーブの目標です。
重いカードばかりだと、序盤に何もできない
マジックで土地を出せるのは、1ターンに1枚だけです。土地のほかにマナを増やすカードを使わなければ、6マナの呪文は、早くても6ターン目にならないと唱えられません。6マナのカードばかりのデッキは、最初の5ターンを何もせずに過ごし、そのあいだに相手の軽いカードに攻め込まれてしまいます。
では、軽いカードだけにすればよいかというと、それも違います。ゲームが長引くと、軽いカードは相手の強いカードに押し負けます。終盤に勝負を決める重いカードも、数枚は要るのです。
軽いカードを多めに入れる理由
それでも、マナカーブは軽い側を厚くするのが基本です。ゲームが長引くほど多くのカードを引くので、重いカードは少なく入れても終盤には手札に来やすいからです。マジックの公式記事では、ドラフト(その場で開けたパックからカードを選んで組む遊び方)の40枚のデッキで、クリーチャーの枚数の目安を次のように挙げています。
| コスト | クリーチャーの目安 |
|---|---|
| 1マナ | 0〜2枚 |
| 2マナ | 4〜6枚 |
| 3マナ | 3〜5枚 |
| 4マナ | 2〜4枚 |
| 5マナ | 1〜3枚 |
| 6マナ以上 | 0〜2枚 |
山の頂上は2マナです。2マナのクリーチャーを全部抜いて4マナを6体にしたデッキは、マナカーブが崩れていると同じ記事で指摘されています。迷ったら軽いほうを入れる、というのがこの記事の勧めです。
マナの払い方が違えば、重さの意味も変わる
マナでコストを払うゲームでも、マナの増え方は同じではありません。増え方が違うと、重いカードの扱いやすさも変わります。
デュエル・マスターズ:重いカードもマナになる
デュエル・マスターズ(日本で2002年に始まったトレーディングカードゲーム)では、自分の番に手札のカードを1枚、上下逆にして「マナゾーン」に置けます。置けるのは1ターンに1枚だけですが、置くカードは何でも構いません。今は出せない重いカードも、マナとして置いてしまえば無駄になりません。そのかわり、置いたカードはもう使えません。手札の重いカードを「後で出す切り札」として取っておくか、「今のマナ」にするかを、毎ターン選ぶことになります。
コストを払うときは、カードの文明(光・水・闇・火・自然の5つの色)を合わせる必要もあります。数だけでなく、色のそろったマナを用意できるかも、重さの一部です。
ONE PIECEカードゲーム:マナは別の山から毎ターン増える
ONE PIECEカードゲーム(漫画『ONE PIECE』のカードゲーム)では、50枚のデッキとは別に、10枚の「ドン!!デッキ」を用意します。自分の番のたびにドン!!デッキから2枚が出てきて、これを横向きにしてコストを払います。先攻の1ターン目だけは1枚です。マナにするために手札を使う必要がなく、ドン!!は番ごとに確実に増えていきます。増える速さが決まっているので、何ターン目に何コストのカードを出せるかが、デッキを組む段階で読みやすい仕組みです。
マナを使わないゲームの「重さ」
マナという仕組みを持たないカードゲームにも、重さはあります。払うものが違うだけです。
ポケモンカードゲーム:エネルギーと進化で、番の数を払う
ポケモンカードゲームでは、進化していない「たねポケモン」は、支払いなしで何匹でも場に出せます。重さが表れるのは、ワザと進化です。ワザを使うには、決まった数のエネルギーをポケモンにつけておく必要があり、手札からつけられるのは1回の番に1枚だけです。エネルギーを3個使うワザなら、手札からつけるだけでは3回の番がかかります。
進化にも時間がかかります。場に出たばかりのポケモンはその番には進化できず、自分の最初の番には誰も進化できません。カードの効果を使わなければ、2回進化するポケモンが場に出るのは、早くても自分の3回目の番です。強いポケモンほど、育てる番の数を払っているのです。
遊戯王OCG:仲間のモンスターで払う
遊戯王OCG(漫画『遊☆戯☆王』から生まれたカードゲーム)のモンスターには、強さの目安になる「レベル」があります。モンスターを手札から普通に出す「召喚」は1ターンに1度だけです。レベル4以下ならそのまま出せますが、レベル5・6は自分の場のモンスター1体を、レベル7以上は2体を「リリース」(墓地へ送ること)しないと出せません。重いモンスターの代金は、すでに場にいる仲間です。
このため、レベルの高いモンスターばかりのデッキは、リリースする仲間がいなくて出せません。ただし遊戯王には、カードの効果などで決まった手順を踏んで出す「特殊召喚」があり、こちらは条件を満たせば1ターンに何度でも行えます。重いモンスターを特殊召喚で出す工夫が、遊戯王のデッキ作りの大きな部分を占めています。
モンコレ:重さを「場所」で払う
1997年に発売された国産のカードゲーム『モンスター・コレクション』(モンコレ)は、モンスターを出すのにマナのような支払いが要りません。かわりに、戦場の地図に置いた地形カードの「リミット」が、その土地にいられるモンスターのレベルの合計を縛ります。召喚するときも、その土地にいる自分のモンスターのレベルと合わせて、リミットを超えてはいけません。本陣のリミットは10です。
モンコレの重さは、ターンが進んでも軽くなりません。レベルの高いモンスターは、いつ出しても土地の枠を大きく使い、一緒に戦える仲間の数を減らします。リミットの小さい土地には、そもそも入れないこともあります。時間ではなく、場所で払う重さです。この進み方はモンコレの進軍で詳しく書きました。
重さの払い方を並べると
| ゲーム | 重さの払い方→重いカードばかりだと起きること |
|---|---|
| マジック | 土地から出すマナ(1ターンに土地1枚)→序盤の数ターンを何もできずに過ごす |
| デュエル・マスターズ | 手札から置くマナ(1ターンに1枚)→切り札をマナに回すか残すかで迷い続ける |
| ONE PIECEカードゲーム | 毎ターン2枚増えるドン!!→ドン!!がたまるまで手札が余る |
| ポケモンカードゲーム | エネルギーと進化に使う番の数→ワザを使えるまで相手に攻め込まれる |
| 遊戯王OCG | リリースする仲間→場に仲間がいなくて出せない |
| モンコレ | 土地のリミット→仲間の枠が減り、狭い土地へ進めない |
払うものは違っても、重いカードには必ず代金があります。そして重いカードばかりだと、その代金を払えるまでの間に負けてしまいます。どのゲームでも、軽いカードで時間や場所を稼ぎ、重いカードで決めるという釣り合いが必要なのです。
『背界の旅団』は、土地の上限で重さを払う
私が制作したカードゲーム『背界の旅団』は、モンコレと同じく、重さを場所で払うゲームです。モンスターのカードには1〜4のレベルがあり、召喚にマナのような支払いはありません。かわりに、土地ごとにパーティ(同じ土地にいる自分のモンスターの一団)のレベル合計の上限があります。本陣は5、背界は5、道は4、沼は3です。召喚は自分の本陣へ行い、本陣にいる仲間と合わせて5を超えられません。進軍するときも、進む先の土地の上限を超えられません。
土地を使い切るまでマナがたまるのを待つ必要がないので、レベル4のモンスターも最初の召喚から出せます。ただ、レベル4は上限4の道へは1体だけでしか入れず、上限3の沼にはまったく入れません。レベル1のモンスターなら、本陣に5体並べられます。重いカードは出すのは早くても、連れて行ける仲間と、進める道を狭めるのです。
カードのレベルの分布
現在のモンスター57種類をレベルごとに数えると、次のようになります。
| レベル | 種類の数→主な顔ぶれ |
|---|---|
| 1 | 20種類→各属性の種族の兵士たち。全種類が戦闘の始まりに手札から援軍として出られる |
| 2 | 29種類→ドレイク、スピリット、種族の長など |
| 3 | 4種類→火・水・土・風のジャイアントが1体ずつ |
| 4 | 4種類→背界王ヴォルケーノ、背界竜アイランド、背界竜アース、背界王スカイ(すべて極レア) |
レベル1と2で全体の9割近くを占め、レベル3と4は各属性に1体ずつしかありません。レベル1のモンスターは、戦闘が始まったときに手札から駆けつける援軍にもなれます。ただし援軍も、戦う土地の上限の中でしか加われません。レベル4を1体で道に送り込めば、そこにはもう援軍の入る余地がありません。30枚のデッキに重い切り札を何枚入れ、どれだけの軽い仲間で支えるか。マナの量ではなく土地の広さで決まる釣り合いが、『背界の旅団』のマナカーブです。詳しくは『背界の旅団』の公式サイトをご覧ください。
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