マジック:ザ・ギャザリングでは、出したばかりのクリーチャーは、その番には攻撃できません。
遊戯王OCGでは、召喚したモンスターでそのまま攻撃できます。
そしてモンスターコレクションでは、部隊を進め終えるまで、新しいモンスターを呼び出すことすらできませんでした。
カードを出したその番に殴れるかどうか。小さな決まりに見えますが、これを許すか縛るかで、ゲームの流れは大きく変わります。縛るとしたら、カードに「酔い」の決まりを付けるのか、それとも番の中の順番で縛るのか。私が制作したカードゲーム『背界の旅団』も、ここで一度、作り方を変えました。
この記事で分かること
- 「召喚酔い」はマジックでは俗称:公式の総合ルールに「非公式にそう呼ばれる」と書かれていて、デュエマでは正式な呼び名です。
- 縛り方は2通りある:カードに「出た番は攻撃できない」と決めるやり方と、「攻撃の後でしか呼べない」と番の順番で決めるやり方です。
- 背界の旅団は、順番の縛りを「酔い」に置き換えた:遊び心地はそのままに、番の中の段階を1つに減らしました。
マジック:「召喚酔い」は、最初からあった
マジック:ザ・ギャザリング(1993年にアメリカで生まれたトレーディングカードゲーム)の総合ルールには、こう決められています。自分の番の始めから続けて場にいないクリーチャーは、攻撃できず、タップ(カードを横に倒すこと)を使う能力も使えません。総合ルールはこの規則について、非公式に「召喚酔い」と呼ばれる、とわざわざ書き添えています。出てきたばかりで、まだ足元がふらついている。そんなイメージの呼び名です。
この決まりは、1993年の最初のセットからありました。マジックの主任デザイナー、マーク・ローズウォーターは、なぜ召喚酔いがあるのかと問われ、生みの親リチャード・ガーフィールドは「すべてのクリーチャーがすぐ攻撃できたら、どれほど攻撃的なゲームになるかを分かっていた」と答えています。
例外は2つあります。1つは「速攻」という能力で、これを持つクリーチャーは出た番でも攻撃できます。もう1つはブロック(相手の攻撃を受け止めること)です。ブロックには召喚酔いの条件がなく、出したばかりのクリーチャーでも守りには立てます。攻めるのは次の番から、守るのはすぐにでも。相手には必ず一度、出てきたクリーチャーに対応する番が回ってくるのです。
デュエマとONE PIECE:同じ縛りと「速攻」
デュエル・マスターズ(タカラトミーが発売しているトレーディングカードゲーム。デュエマ)は、マジックとほとんど同じ決まりを持っています。総合ゲームルールには、自分のターンのはじめから続けてバトルゾーンにないクリーチャーは攻撃できず、このルールは「召喚酔い」と呼ばれる、と書かれています。マジックでは俗称だった言葉が、デュエマでは正式な呼び名になっているわけです。例外は「スピードアタッカー」という能力で、召喚酔いに勝って攻撃できます。
デュエマの番は、カードを引く→マナ(カードを使うための資源)を置く→クリーチャーを召喚する→攻撃する、の順に進み、前の段階には戻れません。召喚はいつも攻撃より前ですが、召喚酔いがあるので、出したクリーチャーで殴れるのは次の番からです。
ONE PIECEカードゲーム(漫画『ONE PIECE』のカードゲーム)も、登場したキャラクターは、その登場したターン中はアタックできないと決めています。例外の能力の名前はそのまま【速攻】です。ONE PIECEで面白いのは、番の中の順番が自由なことです。メインフェイズの中で、キャラの登場もアタックも、好きな順番で何度でも行えます。順番は縛らず、キャラの方に「出た番は動けない」を付けているのです。最初から場にいるリーダー(プレイヤーの分身になるカード)は、この縛りを受けません。
遊戯王OCG:召喚して、すぐ攻撃できる
遊戯王オフィシャルカードゲーム(遊戯王OCG)には、召喚酔いにあたる決まりがありません。番はドロー→スタンバイ→メイン1→バトル→メイン2→エンドの順に進み、メイン1で召喚したモンスターで、そのままバトルフェイズに攻撃できます。
その代わり、ほかのところで縛っています。先攻の1ターン目はバトルフェイズそのものがありません。また、手札から普通に出す「通常召喚」は1ターンに1回だけで、メイン1で使えばメイン2では使えません。すぐ殴れる強さを、出せる数と最初の番で抑えている形です。
ポケモンカード:縛るのは「進化」
ポケモンカードゲームにも、出したばかりのポケモンがワザを使えないという決まりはありません。そのかわり縛られているのは進化です。その番に出したばかりのポケモンは進化できず、お互いの最初の番も進化できません。さらに先攻の最初の番は、ワザもサポート(1番に1枚だけ使える強力な補助カード)も使えません。強い姿になるまでに一番待たせる、というのがポケモンカードの縛り方です。
モンコレ:縛りを「番の順番」で作った
1997年に出た国産のカードゲーム『モンスターコレクション』(モンコレ)は、まったく別のやり方を選びました。総合ルールでは、番は手札の調整→メインフェイズ→普通召喚フェイズ→手札の調整→終了の順に進みます。部隊を隣の土地へ進める「進軍」や地形を置くのはメインフェイズで、手札からモンスターを呼び出す「普通召喚」は、その後の普通召喚フェイズでしか行えません。
カードに「酔い」の決まりを付けなくても、呼び出した時点で進軍の時間はもう終わっています。だから、呼んだモンスターが前線へ向かえるのは次の番から。結果はマジックと同じでも、縛っているのはカードではなく、番の順番です。先手の最初の番には、メインフェイズそのものがありません。
ただし、出してすぐ戦える例外もありました。戦いが始まった瞬間に、手札から戦場へ援軍として駆けつける「即時召喚」です。攻める側も守る側も使えるので、攻め込む前には「相手は手札から誰を出してくるか」まで考えることになります。
6つのゲームを並べると
| ゲーム | 番の流れ | 出した番に攻撃できるか |
|---|---|---|
| マジック:ザ・ギャザリング | メイン→戦闘→メイン | できない(召喚酔い)。速攻なら可。ブロックは可 |
| デュエル・マスターズ | 召喚→攻撃(戻れない) | できない(召喚酔い)。スピードアタッカーなら可 |
| ONE PIECEカードゲーム | メインの中で順番は自由 | できない。【速攻】なら可。リーダーは可 |
| 遊戯王OCG | メイン1→バトル→メイン2 | できる。先攻1ターン目はバトルなし |
| ポケモンカードゲーム | 番の中で準備→最後にワザ | 禁止の決まりはない。出した番は進化できない |
| モンスターコレクション | 進軍→召喚の順 | 順番の上でできない。戦闘中の即時召喚だけが例外 |
なぜ縛るのかを公式に語っているのは、マジックだけです。そのうえで私の考えを書くと、出したその番に殴れるなら、場に並べた仲間で受け止める前に勝負が決まってしまいます。相手に必ず一度は対応する番を渡すこと。それが召喚酔いの役目だと思います。
『背界の旅団』は、なぜ進軍と召喚を分けていたのか
『背界の旅団』は、モンコレの「土地を進む」体験から出発したゲームです。そこで最初は、番の順番もモンコレに合わせました。自分の番は「移動・戦闘」の段階で始まり、部隊を進めて戦い終えたら「召喚」の段階へ移り、手札のモンスターを本陣へ呼び出す。召喚した部隊が前線へ出られるのは次の番から、という形です。
この順番には意味がありました。本陣には入れるレベルの合計に上限があり、大きなモンスターを呼ぶには、まず本陣にいる部隊を送り出して場所を空けなければなりません。誰を送り出し、空いた場所に誰を呼ぶか。進軍が先、召喚が後という順番は、その判断を自然に作っていました。
そして、段階を1つにまとめた
ただ、段階を分けると、番の中でやることが増えます。「進軍を終了」を押さないと召喚できない。先に召喚したくなっても、段階は戻れない。進める部隊がいなくなると、画面が自動で召喚の段階へ移る。はじめての人にとっては、いま何ができて、何ができないのかを覚えることが1つ増えていました。
そこで2026年10月、進軍・戦闘と召喚を1つの段階にまとめました。自分の番の間は、進軍も、本陣への召喚も、手札を捨てるのも、好きな順番で行えます。その代わり、召喚したモンスターは「行動済み」で場に出て、次の自分の番まで進軍できません。番の順番で作っていた縛りを、マジックやデュエマと同じ「酔い」の形に置き換えたのです。
召喚した部隊がその番に出撃できないことは、前と変わりません。本陣の場所を空けたければ、先に部隊を送り出してから呼べばよいので、空ける判断も残ります。変わったのは、押すボタンが減り、画面の上に並んでいた「移動・戦闘 › 召喚」の段の表示がいらなくなったことです。
この決まりは、対戦の最初に呼び出す「旅団長」(守り抜けば勝ち、すべて倒されれば負けになる大将)にも当てはまります。旅団長も呼んだばかりなので、先手も後手も、旅団長が動けるのは2巡目からです。一方で、戦いが始まった瞬間に手札から駆けつける即時召喚は、モンコレと同じく、出てすぐ戦える例外として残しています。
| 変えたところ | 前(モンコレと同じ順番の縛り) | 今(「酔い」の縛り) |
|---|---|---|
| 番の段階 | 移動・戦闘→召喚の2段階 | 1段階。順番は自由 |
| 召喚したモンスター | 召喚の段階では進軍の時間が終わっている | 行動済みで出て、次の自分の番まで進軍できない |
| 本陣の場所を空ける判断 | 進軍が先なので自然に生まれる | 先に送り出してから呼べば同じことができる |
| 戦闘中の即時召喚 | 出てすぐ戦える | 出てすぐ戦える(変えていない) |
縛りの中身は変えず、縛り方だけを変える。カードゲームが30年かけて磨いてきた「召喚酔い」という形は、遊ぶ人にとって分かりやすい形でもありました。詳しくは『背界の旅団』の公式サイトをご覧ください。
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