マリガンとは?手札の引き直しが1枚減る理由

マジック:ザ・ギャザリングでは、手札を引き直すたびに、持てる手札が1枚ずつ減っていきます。
ポケモンカードゲームでは、たねポケモンが1枚もない手札のままでは、対戦を始められません。
そして相手がその手札を引き直すと、こちらは山札からカードを引けるようになります。

カードゲームは、山札をよく切ってから最初の手札を引きます。どんなに考えてデッキを組んでも、最初の数枚が噛み合わず、何もできないまま負けてしまう対戦は起こります。この最初の手札を引き直すことを「マリガン」と呼びます。では、カードゲームは最初の手札の不運をどう救い、その代わりに何を払わせてきたのでしょうか。公式ルールを並べると、作り手ごとの考え方の違いが見えてきます。

この記事で分かること

  • 言葉はゴルフから来た:マリガンは、ゴルフの仲間内で認められる「打ち直し」を指す言葉でした。
  • マジックのマリガンは4つの形を経てきた:最初は「土地ゼロか全部土地」の手札だけを救い、今は7枚を見てから好きな札を戻せます。
  • 代償を払うのは自分とは限らない:ポケモンカードでは、引き直した人ではなく相手のほうがカードを得します。

マリガンは、ゴルフの「打ち直し」から来た

マリガンという言葉は、もともとゴルフの言葉です。仲間内の気軽なゴルフで、失敗した1打を数えずに、同じ場所から打ち直させてもらうことを指します。正式なルールでは認められていない、仲間どうしのおまけです。

言葉の由来ははっきりしていません。よく知られているのは、1920年代にカナダのモントリオールでゴルフをしていたデビッド・B・マリガンという人の名前から来たという説です。ひどいティーショットのあとにすぐ打ち直した、遅刻しかけて慌てていたので1打おまけしてもらった、など話にはいくつか種類があります。記録に残る古い使用例は1931年のアメリカの新聞で、ほかにも別の人物や野球に由来を求める説があります。

「運が悪かった最初の1回を、なかったことにしてやり直す」。この意味が、そのままカードゲームの最初の手札の引き直しに使われるようになりました。

マジック:最初は「土地ゼロか全部土地」だけを救った

マジック:ザ・ギャザリング(1993年にアメリカで生まれたトレーディングカードゲーム)では、最初の手札は7枚です。呪文を唱えるには、土地のカードから生み出すマナという資源が要ります。土地が1枚もなければ何も唱えられず、逆に土地ばかりでも戦う手段がありません。

初期のマジックでマリガンが認められたのは、まさにこの2つの手札だけでした。土地が1枚もない手札か、全部が土地の手札です。土地が1枚だけ、呪文が重すぎて使えないといった「ほとんど何もできない」手札は、救いの対象に入っていませんでした。

1枚減らす代わりに、何度でも:パリからロンドンへ

パリ・マリガン:理由を問わず、1枚少なく

1997年、賞金のかかった公式大会プロツアーで、新しいマリガンが使われ始めました。理由を問わず、相手に手札を見せずに引き直してよい。ただし、引き直した手札は1枚少なくなります。もう一度引き直せば、さらに1枚減ります。この年のロサンゼルスの大会で最初に使われ、続くパリの大会が、構築済みのデッキで戦う大会として初めて採用したため、「パリ・マリガン」と呼ばれるようになりました。

ここで救いの考え方が大きく変わりました。どの手札が「事故」かをルールで決めるのをやめ、引き直すかどうかを遊ぶ人に任せたのです。その代わり、引き直せば手札が減るという代償を払います。7枚で我慢するか、6枚に賭けるか。最初の手札を見た瞬間から、判断が始まるようになりました。

バンクーバー・マリガン:減った人に、山札の1枚を見せる

2015年、カナダのバンクーバーで開かれたプロツアーで、次の改良が試されました。引き直して手札が減った人は、手札を決めたあと、山札の一番上を1枚見て、そのままにするか一番下へ送るかを選べます。この形は、2015年9月26日から始まった新しいセットの発売前イベントから正式なルールになりました。1枚減った分を、次に引くカードを少し整えることで埋め合わせたのです。

ロンドン・マリガン:7枚見てから、減らす札を選ぶ

2019年には、ロンドンでの大会で試された形が正式になりました。マジックの公式は、引き直しで勝負にならない対戦を減らすことを目的に挙げています。紙のマジックでは2019年7月5日から、すべての対戦がこの方式になりました。

今のルールでは、引き直すときも毎回7枚を引きます。そのあと、引き直した回数と同じ枚数を選んで、山札の一番下へ好きな順番で置きます。1回引き直せば7枚から1枚を、2回なら2枚を戻します。手札が1枚ずつ減る代償は変わりませんが、何を残すかを7枚の中から選べるようになりました。なお3人以上で遊ぶ多人数戦では、1回目の引き直しは数えない、つまり1回だけは無料で引き直せます。

ポケモンカード:引き直しは義務、得をするのは相手

ポケモンカードゲームでは、60枚のデッキから最初に7枚を引き、その中の「たねポケモン」(進化していない、最初から場に出せるポケモン)を1枚、バトル場に裏向きで出してから対戦が始まります。手札にたねポケモンが1枚もなければ、対戦を始めることができません。

そのときは、相手に手札を見せて、たねポケモンがないことを確かめてもらいます。それから手札をすべて山札に戻し、よく切って7枚を引き直します。手札を見せるのは、本当に引き直しが必要な手札だったことを相手に示すためです。

面白いのは代償の払い方です。引き直した人の手札は減りません。その代わり、相手が引き直した回数と同じ枚数まで、山札からカードを引くことができます。マジックのマリガンが「自分の手札を減らす」代償だったのに対し、ポケモンカードは「相手に手札を足す」代償です。しかもマジックと違って、引き直すかどうかを選ぶことはできません。たねポケモンがいれば引き直せず、いなければ必ず引き直します。

ほかのゲーム:減らさない引き直しと、選んで返す引き直し

ONE PIECEカードゲーム(漫画『ONE PIECE』のカードゲーム)では、最初の手札は5枚です。先攻の人から順に、1度だけ、手札を全部デッキに戻して切り直し、改めて5枚を引くことを選べます。手札は減らず、相手も何も得ません。代償がない代わりに、使えるのは1度だけで、引き直した手札がもっと悪くても受け入れるしかありません。

デジタルのカードゲーム『ハースストーン』(2014年に出た、パソコンやスマートフォンで遊ぶカードゲーム)は、さらに細かく選ばせます。最初に先攻は3枚、後攻は4枚のカードが配られ、両方の人が、取り替えたいカードに何枚でも印を付けます。印を付けたカードだけが山札の別のカードと入れ替わり、戻したカードがその場で同じカードとして戻ってくることはありません。手札を丸ごと捨てるのではなく、要らない札だけを選んで返す引き直しです。

遊戯王とデュエマ:準備の手順に引き直しがない

遊☆戯☆王オフィシャルカードゲーム(KONAMIのトレーディングカードゲーム。遊戯王OCG)の公式ルールブックでは、デュエルの準備は4つの手順です。デッキを切って相手にも切り混ぜてもらう、デッキを置く、ジャンケンの勝者が先攻か後攻かを選ぶ、そして最後に自分のデッキから5枚を引く。この5枚が、そのままデュエル開始時の手札になり、先攻の人から対戦が始まります。手札を見てから引き直す手順は、この流れの中にありません。

デュエル・マスターズ(タカラトミーのトレーディングカードゲーム。デュエマ)も同じです。総合ゲームルールの「ゲームの始め方」では、40枚のデッキを相手に切ってもらったあと、山札の上から5枚を裏向きのまま「シールド」として並べ、5枚を引いて手札にします。そのあとじゃんけんで先攻を決め、すぐに先攻のターンが始まります。ここにも、最初の手札を引き直す手順はありません。

マジックやポケモンカードが最初の手札の不運に救いを用意したのに対し、この2つのゲームの準備の手順は、配られた5枚をそのまま受け入れるところから対戦を始めます。

不運の救い方は、こうして分かれてきた

ゲーム引き直しの決まり→不運の救い方
初期のマジック土地ゼロか全部土地の手札だけ→ルールが「事故」を決める
パリ・マリガン理由を問わず引き直せるが1枚ずつ減る→自分で判断し、手札で払う
バンクーバー・マリガンパリ式に、山札の上1枚を見る権利を足す→減った分を少し埋める
ロンドン・マリガン(今のマジック)毎回7枚を引き、回数分を山札の下へ→減らすが、残す札を選べる
ポケモンカードゲームたねポケモンがなければ必ず引き直し、相手がその回数までカードを引ける→相手が得をする
ONE PIECEカードゲーム1度だけ、同じ5枚で引き直せる→代償なしだが1回きり
ハースストーン配られた札から、要らないものだけ取り替える→札単位で選ぶ
遊戯王OCGデュエルの準備の手順に引き直しはない→引いた5枚で始める
デュエル・マスターズゲームの始め方の手順に引き直しはない→シールド5枚を置き、引いた5枚で始める

どのゲームも、最初の手札の不運を放ってはおきません。ただ、引き直しにまったく代償がなければ、良い手札が出るまで何度でも引き直せてしまいます。そこで多くのゲームは、手札を減らす、相手に札を与える、回数を1度に絞る、といった形で、引き直しに重さを持たせてきました。遊戯王やデュエマのように、準備の手順に引き直しそのものを置かないゲームもあります。

『背界の旅団』は、魔法だけの初手を自動で配り直す

私が制作したカードゲーム『背界の旅団』のデッキは30枚です。開戦のサイコロで先手を決め、最初の手札は先手が4枚、後手が6枚から始まります。先手の手札を減らす理由は先攻と後攻はどちらが有利?で書きました。

『背界の旅団』の魔法は、戦場にいるモンスターのパーティが持つスペル枠を使って唱えます。モンスターがいなければ、魔法は唱えられません。そこで、最初の手札が魔法だけだったときは、30枚をすべて混ぜ直して、同じ枚数を配り直します。モンスターが1枚でも入るまで、これを自動でくり返します。引き直すかどうかを選ぶ場面はなく、手札も減らず、相手も何も得ません。

『背界の旅団』のカード「火走り」 『背界の旅団』のカード「名を奪う霧」 『背界の旅団』のカード「深海の帳」
『背界の旅団』の魔法カード。火の「火走り」(コモン)、風の「名を奪う霧」(アンコモン)、水の「深海の帳」(コモン)。最初の手札がこうした魔法だけなら、自動で配り直しになります。App Storeで遊ぶ(無料)

例えば、仮に30枚のうち10枚が魔法のデッキなら、4枚の初手が全部魔法になるのは1%に届かない確率で、6枚の初手ならさらにずっと小さくなります。めったに起きないけれど、起きたときは何もできずに一戦が終わってしまう。そういう手札だけを、ルールの側で取り除いています。

『背界の旅団』のカード「ゴブリン坑道兵」
『背界の旅団』の土のゴブリン坑道兵(コモン)。初手にモンスターが1枚でもあれば、配り直しは起こりません。App Storeで遊ぶ(無料)

救う手札をルールで決めるという点では、初期のマジックの「土地ゼロか全部土地」に近い形です。土地の多い少ないや、どの魔法を引いたかといった「少し物足りない手札」は、そのまま受け入れて戦い方を考える。最初の4枚や6枚から、どの仲間を呼び、どこへ進むかを組み立てるところから、もう対戦は始まっています。詳しくは『背界の旅団』の公式サイトをご覧ください。

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参考資料

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