ポケモンカードゲームでは、眠ったポケモンが目を覚ますかどうかを、コインを投げて決めます。
マジック:ザ・ギャザリングが20面ダイスを振るカードを本格的に入れたのは、2021年になってからです。
そしてデュエル・マスターズの総合ルールには、「サイコロ」も「コイン」も一度も出てきません。
カードゲームには、山札を混ぜるという大きな運がもともと入っています。それに加えて、サイコロやコインを振らせるかどうか。この選択は、作品ごとにはっきり分かれています。運をどこに、どれだけ入れるのか。6つのカードゲームの公式ルールと開発者の言葉から見ていきます。
この記事で分かること
- 運には役目がある:マジックの主任デザイナーは、負けている側が追いつく手段として、予測できない出来事を挙げています。
- 入れるゲームも、加減している:マジックの20面ダイスのカードは、出目が悪くても大きく損をしないように作られました。
- 運に数字を足すと、運は「傾き」になる:モンコレや背界の旅団は、サイコロの目にモンスターの数値を足します。
ポケモンカード:コインが、ゲームの一部になっている
ポケモンカードゲームは、コインがいちばん身近なカードゲームです。たとえば「ねむり」になったポケモンは、番が終わるたびにコインを投げ、オモテなら目を覚まします。「こんらん」のポケモンは、ワザを使う前にコインを投げ、ウラならワザが失敗して自分にダメージがのります。「やけど」も、番の間にコインで治るかどうかを決めます。
ワザにも、コインを投げてオモテの数だけダメージが増えるもの、ウラが出るまで投げ続けるものがあります。中には、3回ともウラなら対戦そのものに負けるワザまであります。アニメのポケモンバトルの「当たるか外れるか」のどきどきを、コインでそのまま卓の上に持ち込んでいるのです。
なお、先攻と後攻の決め方は、日本ではじゃんけん、英語版のルールブックではコイン投げです。どちらも、勝った人が先攻か後攻かを選びます。
マジック:運を入れる理由と、抑える工夫
マジック:ザ・ギャザリング(1993年にアメリカで生まれたトレーディングカードゲーム)の総合ルールには、コインを投げる手順とダイスを振る手順の両方が定められています。コインを投げる効果を持つカードは昔からあり、2枚投げて都合のいい方を選べるようにする『クラークの親指』のようなカードもあります。
大きな転機は2021年の『フォーゴトン・レルム探訪』でした。テーブルトークRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』と組んだこのセットで、20面ダイスを振るカードが公式戦で使えるカードとして本格的に入りました。公式の解説は、ダイスのカードを出目が悪くても大きく損をしないように作ったと説明しています。
そもそも、なぜ運を入れるのか。マジックの主任デザイナー、マーク・ローズウォーターは、どんなゲームにも必要な10のことを挙げた記事の中で、負けている側が追いつける仕組みと、驚きを挙げています。大きく振れる出来事があれば、劣勢の側にも勝ち目が残る。そして彼は、こう書いています。
There need to be elements of your game that the players cannot predict.(ゲームには、プレイヤーが予測できない要素が必要だ)── マーク・ローズウォーター
遊戯王OCG:運そのものが、カードの個性になる
遊戯王オフィシャルカードゲーム(遊戯王OCG)では、先攻と後攻をじゃんけんで決め、勝った人が選びます。そのうえで、コインやサイコロを使うカードが、個性の強いカードとして作られています。
コイントスの裏表を当てれば相手のモンスターをすべて破壊し、外せば自分のモンスターが破壊される『時の魔術師』。召喚したときのコイントスで、得る効果が変わる「アルカナフォース」のモンスターたち。お互いにサイコロを振り、小さい目を出した側が相手の目に応じたダメージを受ける『ダイス・ポット』。運をルール全体に広げるのではなく、運を楽しみたい人が選んで入れる、一部のカードに閉じ込めているのです。
デュエマとONE PIECE:サイコロもコインも使わない
デュエル・マスターズ(タカラトミーが発売しているトレーディングカードゲーム。デュエマ)の総合ゲームルールには、「サイコロ」「ダイス」「コイン」という言葉が一度も出てきません。先攻はじゃんけんで決まり、勝った人が必ず先攻になります。
ただ、運がないわけではありません。お互いに山札の上を1枚めくってコストを比べる「ガチンコ・ジャッジ」や、ゲームの始めに山札の上から裏向きに置く5枚のシールドのように、運は山札の中から生まれます。割られたシールドが手札に加わるとき、それがコストなしで使える「S・トリガー」なら、一気に形勢が変わります。
ONE PIECEカードゲーム(漫画『ONE PIECE』のカードゲーム)の総合ルールにも、サイコロやコインは出てきません。運の要素は、山札の上から裏向きに置くライフのカードと、そこから飛び出す【トリガー】です。2つのゲームは、運を山札の中だけに置いています。
モンコレ:サイコロに、モンスターの数値を足す
1997年に出た国産のカードゲーム『モンスターコレクション』(モンコレ)は、サイコロを正面から使いました。総合ルールには、ダイスの定義から「2個振って高い目1つ」のような振り方まで、細かな決まりが並んでいます。作ったのは、テーブルトークRPG『ソード・ワールド』などで知られるゲーム会社、グループSNEです。
先手は、お互いにサイコロを1個振って、大きい目の人に決まります。そして戦いのたびに、攻める側と守る側が同時にサイコロを1個振り、その目にパーティのモンスターが持つ「イニシアチブ」の数値の合計を足します。大きい方が先に攻撃し、同じなら両方が同時に攻撃します。
サイコロの目だけなら、ただの運です。そこへモンスターの数値を足すことで、運は「傾き」に変わります。素早いモンスターをそろえれば先に攻撃しやすくなるけれど、必ずではない。デッキを組む段階から、運をどこまで自分の側に傾けるかを選べるのです。
6つのゲームを並べると
| ゲーム | 先攻・後攻の決め方 | シャッフル以外の運 |
|---|---|---|
| ポケモンカードゲーム | じゃんけん(英語版はコイン)、勝者が選ぶ | ルールとワザにコインが多い(ねむり・こんらん・やけど) |
| マジック:ザ・ギャザリング | 合意した方法で選ぶ人を決める | 一部のカードにコインとダイス(2021年に20面ダイス) |
| 遊戯王OCG | じゃんけん、勝者が選ぶ | 一部のカードにコインとサイコロ |
| デュエル・マスターズ | じゃんけん、勝者が先攻 | なし(山札のめくり・シールド) |
| ONE PIECEカードゲーム | じゃんけんなど、勝者が選ぶ | なし(ライフと【トリガー】) |
| モンスターコレクション | サイコロの大きい方が先手 | 戦いのたびにサイコロ+イニシアチブで先攻を決める |
運を入れすぎると、上手な人が勝てなくなります。デジタルのカードゲーム『ハースストーン』の開発者ベン・ブロードは、運は大切だとしながらも、長い試合が運で決まると気分が悪いと認めています。運をルール全体に広げるか、一部のカードに閉じ込めるか、山札の中だけに置くか。どのゲームも、その加減を探しています。
『背界の旅団』は、サイコロに速さを足す
私が制作したカードゲーム『背界の旅団』は、モンコレのやり方を受け継いでいます。戦いが始まり、援軍の呼び出しと隊列の並べ替えが終わったら、両軍が6面のサイコロを1個ずつ振り、そこへ戦うパーティ全員の「速さ」を足します。大きい方が先に攻撃し、同じなら同時攻撃です。同時攻撃では、能力も魔法も使えず、お互いの攻撃がそのまま当たります。
速さの差がどれだけ効くかを、サイコロ2個の組み合わせ36通りで数えると、次のようになります。
| こちらの速さの合計が | 先に攻撃できる | 同時攻撃 | 後に攻撃する |
|---|---|---|---|
| 相手と同じ | 42% | 17% | 42% |
| 1多い | 58% | 14% | 28% |
| 2多い | 72% | 11% | 17% |
| 3多い | 83% | 8% | 8% |
| 4多い | 92% | 6% | 3% |
速さを2つ上回っても、6回に1回ほどは後手に回ります。4つ上回っても、100%にはなりません。素早い部隊は先手を取りやすく、重い大型の竜は遅くなる。それでも最後の一押しはサイコロに残しました。「たぶん先に殴れる」と「必ず先に殴れる」の間に、攻め込む前の迷いが生まれるからです。
そのほかの運は、山札を混ぜることと、対戦ごとにランダムに並ぶ土地の配置です。オンライン対戦では、先手もサイコロで決めます(同じ目なら振り直し)。カードの効果でサイコロやコインを振らせることはしていません。運の入り口を戦いの始めの1回に絞り、そこへ自分の選んだ部隊の速さで手を加えられるようにしています。詳しくは『背界の旅団』の公式サイトをご覧ください。
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