マジック:ザ・ギャザリングでは、先に動く人は最初の1枚を引けません。
ポケモンカードゲームでは、先攻の最初の番はワザを使えません。
そしてモンスターコレクションでは、自分の番に攻め込んでも、先に殴れるとは限りませんでした。
2人で交互に番を回すゲームでは、先に動ける側が一歩先を行きます。カードを先に出し、先に攻撃の準備を整え、相手はそれに答える形で動くことになるからです。では、カードゲームはこの「先手の得」をどうやって埋めてきたのでしょうか。公式ルールを並べてみると、作り手ごとの考え方の違いが見えてきます。
この記事で分かること
- 先攻から何かを削る:最初のドロー、最初の攻撃、最初の資源。多くのゲームは、先攻の最初の番から何かを1つ取り上げています。
- 後攻に何かを足すゲームもある:デジタルのカードゲーム『ハースストーン』は、後攻に手札1枚と特別なカードを配ります。
- 先攻を戦いごとに決め直す:モンコレは、番の先後とは別に、戦いのたびにサイコロで先に攻撃する側を決めました。
先に動く側は、なぜ得をするのか
カードゲームでは、毎回の番に少しずつ使える資源が増え、場にカードが並んでいきます。先攻は、その積み上げを相手より1番ぶん早く始められます。相手がまだ何もできないうちに場を作り、相手の番には、こちらの用意したものへの対応を迫ることができます。
先後の決め方そのものにも、この得への意識が表れています。マジック:ザ・ギャザリング(1993年にアメリカで生まれたトレーディングカードゲーム)の総合ルールでは、複数のゲームで勝敗を決める試合の場合、2戦目からは直前のゲームで負けた人が先攻か後攻かを選びます。
先攻から「最初の1枚」を削る:マジック、遊戯王、デュエマ
いちばん分かりやすい埋め方は、先攻の最初のドローをなくすことです。
マジックでは、2人で対戦するとき、先攻の人は最初のターンのドローを飛ばします。面白いのは、3人以上で遊ぶ多人数戦では、誰も最初のドローを飛ばさないと決められていることです。相手が何人もいれば、先に動く1人だけが得をする構図にはなりにくい。2人対戦だからこそ、先攻の1枚を削る必要があるわけです。
遊戯王オフィシャルカードゲーム(遊戯王OCG)も、先攻の1ターン目は通常のドローを行いません。ただし、ドローを行う段階そのものはあり、カードの効果で引くことはできます。さらに遊戯王では、先攻の1ターン目にはモンスターで攻撃する段階(バトルフェイズ)がありません。先攻は1枚少ない手札で、守りの準備だけをして相手に番を渡すことになります。
デュエル・マスターズ(タカラトミーが発売しているトレーディングカードゲーム。デュエマ)も、先攻の最初のターンはドローがありません。先後の決め方は少し変わっていて、じゃんけんに勝った人がそのまま先攻になり、後攻を選ぶことはできません。勝った側が必ず先に動き、その代わり最初の1枚を引けない、という形です。なお、デュエマのクリーチャーは、自分のターンのはじめからバトルゾーンにいないと攻撃できません(「召喚酔い」と呼ばれるルール)。これは先攻・後攻とも同じです。
先攻から「最初の攻撃」を削る:ポケモンカード
ポケモンカードゲームでは、じゃんけんで勝った人が先攻か後攻かを選びます。そして先攻の最初の番は、ポケモンのワザを使えません。ワザは相手のポケモンにダメージを与える攻撃なので、先攻は最初の番に相手へ手を出せないことになります。加えて、1番に1枚だけ使える強力な補助カード「サポート」も、先攻の最初の番には使えません。
補足すると、ONE PIECEカードゲーム(漫画『ONE PIECE』のカードゲーム)も、先攻の1ターン目はカードを引けず、カードを使うための資源「ドン!!カード」も通常の2枚ではなく1枚だけです。なお、1ターン目にバトルできないのは先攻・後攻とも同じなので、こちらは先攻だけの縛りではありません。
後攻に「足す」:ハースストーン
先攻から削るのではなく、後攻に足すやり方もあります。2014年に出たデジタルのカードゲーム『ハースストーン』では、後攻の人は最初の手札が先攻より1枚多く、さらに「ザ・コイン」という特別なカードを受け取ります。ザ・コインは0コストの呪文で、使った番だけ、カードを出すための資源(マナ)が1増えます。
後攻はこのコインを好きな番に使い、1度だけ先攻を追い越すような動きができます。先攻の動きを止めるのではなく、後攻に「いつ追いつくか」を選ばせる。埋め方の向きが逆になっているのが特徴です。
モンコレは、先攻を「戦いごと」に決め直した
1997年に出た国産のカードゲーム『モンスターコレクション』(モンコレ)も、まず対戦の始めに先後を決めます。お互いにサイコロを1個振り、目の大きい人が「先手」です。そして先手の最初の番には、地形を置いたり部隊を進めたりする段階そのものがありません。最初の番は、モンスターを呼び出して手札を整えるだけで終わります。
モンコレが変わっているのは、その先です。モンコレでは、相手のいる土地へ攻め込むと戦いになりますが、戦いの中で先に攻撃する「先攻」は、攻め込んだ側とは限りません。戦いが始まり、援軍の呼び出しと隊列の並べ替えが終わったところで、攻める側と守る側が同時にサイコロを1個振ります。その目に、パーティにいるモンスターが持つ「イニシアチブ」という数値の合計を足し、大きい方が先攻、小さい方が後攻になります。
同じ数になったときは、先攻も後攻も決まらず「同時攻撃」になります。このときは、どちらもカードや能力の使用を宣言できず、それまでかかっていた能力の効果も消えて、モンスター同士がそのまま攻撃し合います。
つまりモンコレは、「いつ攻め込むかを選べる」番の得と、「戦いで先に殴れる」得を切り離しました。自分の番に攻め込んでも、相手のパーティのほうが素早ければ、先に殴られるのはこちらです。どの土地へ攻め込むかの判断はモンコレの進軍で、先攻・後攻が決まった後の読み合いはモンコレの魅力は対抗合戦で詳しく書きました。
先手の得は、こうして埋められてきた
| ゲーム | 先手の得の埋め方 |
|---|---|
| マジック:ザ・ギャザリング | 先攻は最初のドローを飛ばす(2人対戦のみ)→先攻の手札を1枚減らす |
| 遊戯王OCG | 先攻1ターン目は通常のドローとバトルフェイズなし→手札と攻撃の両方を削る |
| デュエル・マスターズ | じゃんけんの勝者が必ず先攻、先攻の第1ターンはドローなし→先攻の手札を1枚減らす |
| ポケモンカードゲーム | 先攻の最初の番はワザとサポートを使えない→最初の攻撃を削る |
| ONE PIECEカードゲーム | 先攻はドローなし・ドン!!1枚→ドローと資源を絞る(1ターン目にバトルできないのは先攻・後攻とも) |
| ハースストーン | 後攻に手札1枚と「ザ・コイン」→後攻に足す |
| モンスターコレクション | 先手の最初の番は進軍なし、戦いごとにサイコロで先攻を決める→番の得と戦いの得を分ける |
多くのゲームは、対戦の最初の数番だけを調整しています。モンコレのように、戦いのたびに先攻を決め直すゲームでは、先手の得は最初の1番に集まらず、対戦の中に何度も散らばることになります。
『背界の旅団』の先手と先攻
私が制作したカードゲーム『背界の旅団』も、モンコレと同じく「番の先後」と「戦いの先攻」を分けています。
正式ルールの対戦では、まず開戦のサイコロで先手を決めます(同じ目なら振り直し)。手札の上限は6枚ですが、先手は最初の手札が4枚、後手は6枚から始まります。先に動ける側から、最初の手札を削る埋め方です。
戦いの先攻は、援軍の呼び出しと隊列の並べ替えが終わった後、両方のパーティが6面のサイコロを1個ずつ振って決めます。そこへパーティの生き残っている全員の速さを足し、合計の大きい方が先攻です。同点のときは同時攻撃になり、能力も魔法も使えません。両方の攻撃がそのまま同時に当たるので、相討ちも起こります。
先手の勝率を、シミュレーターで何度も測った
先手と後手の釣り合いは、ルールを決めるときにいちばん気にしたところです。そこで、コンピューターどうしを何千回も対戦させるシミュレーターを作り、ルールを変えるたびに先手の勝率を測り直しました。対戦させたのはいちばん強いCPUどうしで、同じ乱数の対戦を、先手と後手を入れ替えてもう一度戦わせます。こうすると、デッキや運の偏りではなく、先手か後手かの差だけが数字に表れます。
| ルールの段階(変えた順) | 試合数 | 先手の勝率 |
|---|---|---|
| 8マスの盤面。先手も最初の手札は6枚 | 8,960戦 | 55.2% |
| 先手の最初の手札を4枚に減らす | 8,960戦 | 55.3% |
| 最初に出した仲間を全員「旅団長」にする旅団長戦 | 1,280戦 | 65.4% |
| 旅団長は最大3体まで | 2,000戦 | 46.6% |
| 12巡で決着しないときは、占領した土地の数で勝ち負けを決める(今の正式ルール) | 2,000戦 | 50.2% |
旅団長戦を入れてからの勝率は、勝ち負けがついた試合だけで数えています。旅団長戦を入れた直後は、先手が65.4%も勝つ、はっきり先手有利のゲームになりました。旅団長の数に上限を付けると、今度は先手が46.6%と後手寄りに振れます。最後に、12巡で決着しないときの判定を加えた今の正式ルールで、先手の勝率は50.2%、引き分けは2,000戦中167戦まで減りました。
途中でCPUの考え方そのものを作り直しているので、時期の違う数字を単純に比べることはできません。それでも、ルールを一つ変えるたびに先手の得がどちらへ動くかを確かめながら、ほぼ五分の形にたどり着きました。数字だけで決めたわけではなく、最後は人が実際に遊んで「楽しい」と確かめてから、今のルールにしています。
素早いモンスターを並べれば先攻を取りやすくなり、重い大型を入れれば遅くなる。それでもサイコロ1個ぶんの揺れが残るので、先攻は最後まで約束されません。攻め込む前に「相手のほうが速いかもしれない」と考える手触りは、モンコレで遊んだ頃の記憶から来ています。詳しくは『背界の旅団』の公式サイトをご覧ください。
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