マジック:ザ・ギャザリングの最初のセットには、わずか1マナで相手のクリーチャーをゲームから消し去る呪文《剣を鍬に》がありました。
ただし消されたクリーチャーの持ち主は、そのクリーチャーのパワーと同じだけライフを得ます。
デュエル・マスターズの《デーモン・ハンド》は、相手のクリーチャー1体を墓地へ送るのにコストが6もかかるのに、自分のシールドが割られたときならタダで使えます。
カードゲームでは、相手の場に出たカードを取り除く効果を「除去」と呼びます。強いモンスターが出てきたら、殴り合うより先に消してしまえばいい。ところが、その「消す」の中身はゲームによってまるで違います。墓地へ送るのか、ゲームの外へ出すのか、手札へ帰すのか。そして、どのゲームも除去に何かしらの値札を付けています。相手のカードを倒す方法は、なぜこんなに分かれたのでしょうか。
この記事で分かること
- 除去は「行き先」で強さが変わる:同じ1体を消す効果でも、墓地へ送るか、ゲームの外へ出すか、手札へ戻すかで、相手が取り返せるかどうかが変わります。
- どのゲームも除去に値札を付けている:重いコスト、倒せる相手の上限、相手に渡すおまけなど、強すぎないように縛る形がゲームごとに違います。
- カードで倒さないゲームもある:ポケモンカードでは、相手を倒すのは基本的にワザのダメージで、カードは「誰を前に出させるか」を動かします。
除去とは、相手の場からカードを取り除くこと
除去は、相手が場に出したカードを、効果で場から離れさせることです。取り除いたカードがどこへ行くかは効果によって違い、その違いが強さの違いになります。
マジック:ザ・ギャザリング(1993年にアメリカで生まれたトレーディングカードゲーム)の総合ルール(細かな裁定を定めた公式の規則集)は、この行き先を言葉で厳密に分けています。
- 破壊:場から持ち主の墓地(使い終わったカードの置き場)へ移すこと。
- 追放:ゲームから取り除かれた「追放領域」へ移すこと。
- ダメージ:クリーチャーに印として残り、その合計がタフネス(耐久力)以上になると破壊されます。
マジック:行き先が違えば、強さも違う
代表的な除去を並べてみます。
- 《稲妻》:1マナで3点のダメージ。大きなクリーチャーには届きません。
- 《破滅の刃》:2マナでクリーチャーを1体破壊します。ただし黒いクリーチャーは選べません。
- 《神の怒り》:4マナで、自分のものも含めて全部のクリーチャーを破壊します。
- 《送還》:1マナでクリーチャーを持ち主の手札に戻し、出し直す手間を負わせます。
- 《剣を鍬に》:1マナでクリーチャーを追放します。その代わり、持ち主はそのパワーと同じだけライフを得ます。
破壊と追放の差は、壊れにくいクリーチャーを相手にすると見えてきます。「破壊不能」という能力を持つパーマネント(場に残るカード)は、破壊されず、致死ダメージでも墓地へ行きません。けれど追放は破壊ではないので、破壊不能のクリーチャーにも効きます。墓地から呼び戻す道もふさぐので、《剣を鍬に》は相手にライフを渡す値札付きでも強い除去です。
「対象にとる」かどうか
「呪禁」を持つパーマネントは、相手の呪文や能力の対象になりません。1体を選ぶ除去はすり抜けられますが、《神の怒り》のように選ばずに全部へ効く除去は届きます。
遊戯王OCG:「破壊」と「除外」、対象を取るかどうか
遊戯王OCG(漫画『遊☆戯☆王』から生まれたカードゲーム)の公式ルールブックも、行き先をはっきり分けています。「破壊」は、モンスターの戦闘やカードを破壊する効果で、カードが墓地へ送られること。「除外」は、カードをゲームから取り除くことで、除外されたカードは効果に使われない限り、そのデュエルの間は使えなくなります。
もう一つの分かれ目が「対象を取る効果」です。効果を与える相手を選んで発動するのが「対象を取る効果」で、処理の中で初めて相手が決まるものは違います。「効果の対象にならない」守りを持つカードもあり、どちらの除去なら届くかが勝負を分けます。
全体を消す除去は、値札の付け方で扱いが分かれます。《ブラック・ホール》は、自分のものも含めてフィールドのモンスターを全て破壊する魔法カードで、2026年10月1日からの禁止・制限カードの一覧には入っていません。一方、相手の魔法・罠カードだけを全て破壊する《ハーピィの羽根帚》は、同じ一覧で制限カード(デッキに1枚まで)です。
デュエル・マスターズ:墓地、手札、マナ、そしてS・トリガー
デュエル・マスターズ(デュエマ。クリーチャーでシールドを割り合う日本のカードゲーム)の総合ゲームルールでは、「破壊する」はカードをバトルゾーン(場)から墓地に置こうとすることです。パワーが0以下になったクリーチャーも破壊されます。
最初の弾「DM-01」の呪文を並べると、除去の値札がよく見えます。
| 呪文 | コスト | 何をするか |
|---|---|---|
| 《クリムゾン・ハンマー》 | 2 | パワー2000以下の相手クリーチャー1体を墓地へ |
| 《デス・スモーク》 | 4 | タップされていない相手クリーチャー1体を墓地へ |
| 《トルネード・フレーム》 | 5 | パワー4000以下の相手クリーチャー1体を墓地へ。S・トリガー付き |
| 《デーモン・ハンド》 | 6 | 相手クリーチャー1体を墓地へ。S・トリガー付き |
| 《スパイラル・ゲート》 | 2 | クリーチャー1体を持ち主の手札へ。S・トリガー付き |
| 《ナチュラル・トラップ》 | 6 | 相手クリーチャー1体を持ち主のマナゾーンへ。S・トリガー付き |
倒せる相手が広いほど、コストは重くなります。《ナチュラル・トラップ》の行き先は、カードを使うための資源を置くマナゾーンです。消す代わりに、相手のマナを1枚増やしてしまいます。
重い除去を、タダにする仕組み
S・トリガーは、シールドがブレイクされて手札に加わるとき、そのカードを相手に見せて、コストを支払わずにすぐ使える能力です。コスト6の《デーモン・ハンド》も、攻め込まれたときなら0で飛び出します。
ポケモンカードとONE PIECE:倒すのは戦いで、効果は数字で縛る
ポケモンカード:倒すのはワザ、カードは「前に出す」
ポケモンカードゲームでは、ワザのダメージやカードの効果などで残りHPがなくなったポケモンが「きぜつ」し、ついているカードと一緒にトラッシュ(捨て札)されます。相手は、きぜつさせたポケモンの数だけサイド(6枚の報酬札)を取り、全て取り終えれば勝ちです。
ワザで狙えるのは、ふつうは前に出ているバトルポケモンです。ベンチ(控えの場)の相手を狙うときに使うのが《ボスの指令》です。相手のベンチポケモンを1匹選んで、バトルポケモンと入れ替えさせます。このカード自体は何も倒さず、引きずり出してからワザで倒します。しかも「サポート」という種類で、自分の番に1枚しか使えません。
ONE PIECEカードゲーム:パワーとコストで上限を決める
ONE PIECEカードゲーム(漫画『ONE PIECE』のカードゲーム)の総合ルールでは、「KO」はバトルに負けたり、カードの効果でKOされたりして、キャラクターカードがトラッシュに置かれることです。
除去の形は「KOする」のほかに「手札に戻す」「デッキの下に置く」もあり、多くに数字の上限が付いています。最初のブースターパック「ROMANCE DAWN」などから例を挙げます。
- 赤の《カリブー》:KOされたとき、相手のパワー4000以下のキャラ1枚までをKOします。
- 緑の《X・ドレーク》:登場したとき、相手のレスト(横向きにした使用済みの状態)のコスト4以下のキャラ1枚までをKOします。
- 青の《アルビダ》:アタックしたときに自分の手札を1枚捨てると、相手のコスト3以下のキャラ1枚までを手札に戻します。
- 紫の《独楽結び》:場のドン‼(コストを払うための札)を2枚戻すと、相手のコスト4以下のキャラ1枚までをデッキの下に置きます。
色ごとに、除去の縛り方まで性格が分けられています。
除去が強すぎると、どうなるか
どんな相手でも安く確実に消せる除去があれば、強いカードを出すほど、相手の除去1枚と交換されて終わります。逆に除去が弱すぎれば、先に強いカードを出した側が押し切ります。どのゲームも、その間に値札を付けて釣り合いを取っています。
| 縛り方 | 例→何を抑えるか |
|---|---|
| 倒せる相手に上限を付ける | 《稲妻》の3点、《クリムゾン・ハンマー》のパワー2000以下、ONE PIECEのコスト○以下→大きなカードほど消されにくくする |
| 倒せる相手の種類を絞る | 《破滅の刃》の黒以外、《デス・スモーク》のタップしていない相手、《X・ドレーク》のレストのキャラ→どれでも消せるわけではなくする |
| コストを重くする | 《デーモン・ハンド》のコスト6→何でも消せる除去ほど使う番を遅くする |
| 相手におまけを渡す | 《剣を鍬に》のライフ、《ナチュラル・トラップ》のマナ→消す代わりに相手を少し助ける |
| 自分も巻き込む | 《神の怒り》、《ブラック・ホール》→全部を消すなら自分の場も失う |
| 枚数を絞る | 《ハーピィの羽根帚》の制限、《ボスの指令》の1番に1枚→同じ除去を何度も使えなくする |
| 行き先を軽くする | 手札に戻す、デッキの下に置く→消すのではなく、出し直す手間で止める |
『背界の旅団』の除去は、戦いの中で起き、返せる
私が制作したカードゲーム『背界の旅団』の除去は、ほとんどが戦闘の中で起きます。魔法は、戦場で戦っている自分のパーティ(同じ土地にいる仲間)が持つ、同じ属性の「スペル枠」を使って唱えます。仲間を連れて土地へ攻め込み、戦いが始まって初めて、魔法や能力で相手にダメージを与えられます。生命力が0以下になったモンスターは破棄されます。
背界王ヴォルケーノの能力「熔岩のブレス」は、相手パーティの1体に6ダメージを与え、この宣言には対抗できません。ただし普通の能力なので自分から使う手番が要り、使えばその戦闘の行動を消費します。一方、魔法「火走り」は、相手が何かを宣言したときにだけ割り込める[対抗]の魔法で、相手パーティの先頭の1体に2ダメージを与えます。
そして、ほとんどの除去は返せます。相手の宣言に一手を返し合い、最後に出した一手から効いていくので、とどめの魔法も相手の対抗でひっくり返ることがあります。風の魔法「名を奪う霧」は、直前に宣言された相手の魔法を打ち消します。この応酬はモンコレの魅力は対抗合戦で詳しく書きました。
倒しきれる除去には、はっきりした値札も付けました。アンカー・ジャイアントが破棄できるのは、相手のドラゴンだけです。オーク大族長は、相手の1体を確実に破棄できる代わりに、自分のパーティのオーク1体を先に破棄しなければなりません。どこで戦い、誰を連れて行くか。除去も、進軍の判断の中に置いています。詳しくは『背界の旅団』の公式サイトをご覧ください。
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