ポケモンカードゲームでは、相手のポケモンを倒すと、カードを1枚もらえます。
マジック:ザ・ギャザリングでは、相手のクリーチャーを倒しても、ルール上は何ももらえません。
そしてONE PIECEカードゲームでは、攻撃を受けた側の手札が増えます。
相手を倒した側にご褒美を出すと、ゲームは盛り上がります。けれど、倒せるのはたいてい、すでに押している側です。押している側がご褒美をもらえば、もっと押せるようになり、差は開く一方になります。カードゲームは、この「勝っている側が勝ち続けてしまう」問題をどう扱ってきたのでしょうか。公式ルールを並べると、作り手ごとにまったく違う答えが出ています。
この記事で分かること
- 倒すと、カードがもらえる:ポケモンカードは、倒すたびに自分のカードを取り、取り切ったら勝ちという形で、倒すこと自体を勝ち筋にしています。
- 倒されると、手札が増える:ONE PIECEカードゲームとデュエル・マスターズでは、攻め込まれた側がカードを手札に加え、反撃の道具を手にします。
- 倒しても、何も起きない:マジック、遊戯王OCG、モンスターコレクションでは、倒した側がカードを受け取る決まりはありません。
ご褒美は、勝っている側に届く
カードゲームで相手のカードを倒せるのは、多くの場合、場に強いカードを並べられている側です。そこにご褒美を足すと、強い側がさらに強くなります。ゲーム作りでは、こうした「有利がさらに有利を呼ぶ」流れを雪だるまにたとえることがあります。転がるほど大きくなり、止まらなくなるからです。
雪だるまが転がりすぎると、勝負は途中で決まってしまい、残りの時間はただの消化試合になります。かといってご褒美をなくすと、相手を倒す手応えが薄くなります。どこにご褒美を置き、どこで差を縮めるか。ここから、6つのゲームの答えを順に見ていきます。
ポケモンカード:倒すたびに、自分のカードを取り返す
ポケモンカードゲームは、ポケモンを戦わせて遊ぶ日本生まれのカードゲームです。対戦の準備で、各プレイヤーは自分の山札から6枚を裏向きのまま脇へ置きます。これを「サイド」と呼びます。
相手のポケモンを「きぜつ」させる、つまり倒すと、倒した側は自分のサイドを1枚取って手札に加えます。そして、先に自分のサイドを全部取ったプレイヤーが勝ちです。相手の場にポケモンが1匹もいなくなった場合や、相手が自分の番の最初に山札を引けなかった場合も勝ちになります。
この仕組みでは、倒すことが、そのまま勝利への階段になっています。しかもサイドは手札に入るので、倒した側は使えるカードまで増えます。1回倒したご褒美が次の攻撃の材料になり、押している側がそのまま押し続けやすい作りです。
強いポケモンほど、倒されると高くつく
一方で、ポケモンカードには差を縮める工夫もあります。取れるサイドの枚数は、倒したポケモンによって違います。普通のポケモンなら1枚ですが、強力な「ポケモンex」を倒すと2枚、さらに強い「メガシンカex」なら3枚取れます。強いポケモンで押している側は、そのポケモンを一度倒されるだけで、大きく追いつかれます。ご褒美の大きさを、倒した相手の強さに合わせているのです。
ONE PIECEカードゲーム:攻められた側の手札が増える
ONE PIECEカードゲームは、漫画『ONE PIECE』の登場人物で戦うカードゲームです。各プレイヤーは「リーダー」というカードを1枚持ち、リーダーに書かれた数だけ、山札の上のカードを裏向きのまま「ライフ」として置きます。
リーダーがダメージを受けると、受けた側はライフの上から1枚を自分の手札に加えます。ライフが0枚のときにさらにダメージを受けると負けです。つまり、攻め込まれるたびに、攻められた側の手札が1枚ずつ増えていきます。
さらに、ライフから加わるカードが「トリガー」という効果を持っていれば、手札に加える代わりに公開して、その効果を使うこともできます。攻撃を受けた瞬間に、思わぬ反撃が飛び出すことがあるわけです。
増えた手札は、守りにも使える
手札は、守りの道具にもなります。相手に攻撃されている最中、カウンターの数値を持つキャラクターカードを手札から捨てると、その数値の分だけ自分のリーダーかキャラクター1枚のパワーを上げられます。押されている側ほど手札が増え、守りと逆転の手段が残る。勝ちに近づくほど相手に材料を渡してしまう、という作りです。
では、相手のキャラクターを倒したときはどうでしょうか。バトルに負けたキャラクターは「KO」され、持ち主の捨て札置き場である「トラッシュ」に置かれます。倒した側が何かを受け取る決まりは、ルールにはありません。ゲームの全体像はONE PIECEカードゲームの解説で紹介しています。
デュエル・マスターズ:シールドを割られた側の手札が増える
デュエル・マスターズ(デュエマ)は、タカラトミーが出している、クリーチャーと呪文で戦うカードゲームです。ゲームの始めに、各プレイヤーは山札の上から5枚を裏向きのまま並べます。これが「シールド」です。
クリーチャーで相手プレイヤーを攻撃すると、相手のシールドを「ブレイク」します。ブレイクされたシールドのカードは、ブレイクされた側の手札に加わります。シールドが0枚のときに攻撃を受けると、その攻撃は「ダイレクトアタック」になり、受けたプレイヤーは負けます。ONE PIECEカードゲームのライフとよく似た、攻め込まれるほど攻められた側の手札が増える作りです。
しかも、手札に加わるカードが「S・トリガー」という能力を持っていれば、相手に見せて宣言し、コストを払わずにその場で使えます。シールドを割られた瞬間に、守る側の呪文が唱えられたり、クリーチャーが出てきたりすることがあるわけです。一方、クリーチャー同士のバトルでは、パワーの高いほうが勝ち、負けたクリーチャーは破壊されて墓地に置かれます。勝った側が何かを受け取る決まりは、ルールにはありません。
マジック:倒しても、何ももらえない
マジック:ザ・ギャザリングは、1993年にアメリカで生まれたトレーディングカードゲームです。プレイヤーは20点のライフで始まり、ライフが0以下になると負けます。
戦場で戦うカードは「クリーチャー」と呼ばれます。受けたダメージの合計が、クリーチャーの耐久力にあたる「タフネス」以上になると、そのクリーチャーは破壊されて持ち主の捨て札置き場「墓地」に置かれます。このとき、倒した側がカードやライフを受け取る決まりは、基本のルールにはありません。カードに書かれた効果で何かを得ることはありますが、それはそのカードの力であって、ルールが用意したご褒美ではありません。
倒すことの得は、相手の戦力が減ることだけです。そのぶん雪だるまは、ルールの外で転がります。相手のクリーチャーを減らせば、次の攻撃が通りやすくなり、ライフを削りやすくなる。ご褒美を置かない代わりに、場の有利そのものがご褒美になる作りと言えます。
遊戯王OCG:倒した差が、ライフに入る
遊戯王OCG(遊☆戯☆王オフィシャルカードゲーム)は、漫画『遊☆戯☆王』に登場するカードゲームを、作中の設定をもとに実際のカードゲームにしたものです。お互いに8000のライフポイントを持って始め、相手のライフポイントを先に0にしたプレイヤーが勝ちます。
攻撃表示のモンスター同士が戦うと、攻撃力の高いほうが勝ち、負けたモンスターは破壊されて捨て札置き場の「墓地」へ送られます。このとき、上回った攻撃力の分が、負けた側のライフポイントから引かれます。相手が守備表示のモンスターなら、破壊してもダメージはありません。相手の場にモンスターがいなければ、相手プレイヤーを直接攻撃でき、攻撃力がそのままダメージになります。
倒した側がカードを受け取る決まりは、遊戯王OCGの基本のルールにもありません。マジックと同じく、倒した得は相手の戦力が減ることと、攻撃表示のモンスターを倒したときに入る差の分のダメージです。倒すことが、そのまま相手のライフを削る一歩にもなっています。
モンスターコレクション:倒しても、勝ちにはならない
モンスターコレクション(モンコレ)は、1997年に出た国産のカードゲームです。地形カードで作った地図の上をモンスターの部隊が進み、相手の本拠地「本陣」へ攻め込んで勝てば勝利です。詳しくはモンコレの進軍で解説しています。
モンコレのユニット(モンスター)は、防御力以上のダメージを受けると死亡します。ただし、相手のユニットを倒したこと自体へのご褒美は、ルール上ありません。倒しても、その土地から相手がいなくなり、攻め込んだ側の土地になるだけです。勝つにはあくまで、本陣まで進むしかありません。
手札は、番のたびに6枚へ戻る
モンコレには、差が開きすぎないもう一つの仕組みがあります。自分の番の中で手札を整える段階が2回あり、手札上限の6枚より少なければ、6枚になるまで補充します。戦いでカードを使い切っても、番が来れば手札は戻ります。どれだけ押されていても、手札の枚数では置いていかれない作りです。
6つのゲームを並べると
同じ「相手を倒す」でも、何が起きるかはゲームごとにまるで違います。
| ゲーム | 倒したときに起きること | 勝っている側/負けている側への影響 |
|---|---|---|
| ポケモンカードゲーム | 倒した側がサイドを取り、手札に加える | 勝っている側がさらに進む。ただし強いポケモンを倒されると一気に追いつかれる |
| ONE PIECEカードゲーム | キャラクターを倒しても、倒した側は何も得ない。リーダーが攻められると、攻められた側の手札が増える | 負けている側に手札とトリガーが渡り、逆転の目が残る |
| デュエル・マスターズ | クリーチャーを倒しても、倒した側は何も得ない。シールドをブレイクされると、ブレイクされた側の手札が増える | 負けている側に手札とS・トリガーが渡り、逆転の目が残る |
| マジック:ザ・ギャザリング | 倒した側には、ルール上は何もない | 相手の戦力が減ること自体が、勝っている側の得になる |
| 遊戯王OCG | 倒した側には、ルール上は何もない。攻撃表示のモンスターを倒すと、攻撃力の差が相手のライフに入る | 相手の戦力が減り、ライフも削れる。勝っている側の得になる |
| モンスターコレクション | 倒した側には、ルール上は何もない。勝つには本陣を落とす | 手札は番ごとに6枚へ戻り、手札の差は開かない |
背界の旅団:倒したら、手札が6枚まで戻る
私が制作したカードゲーム『背界の旅団』では、各プレイヤーが最初に1〜3体の「旅団長」を選びます。旅団長は軍を率いる大将で、相手の旅団長をすべて倒すと勝ちです。
開発中、コンピューター同士の対戦を何度も繰り返して勝率を測ったところ、最初に選ぶ旅団長の人数で差が出ました。1体で始めた側の勝率は36.2%、2体で45.1%、3体で55.4%です。大将を少なく選ぶほど、不利になっていました。
そこで、敵の旅団長を倒した戦いのあと、倒した側は手札を6枚まで補充できるようにしました。旅団長を少なく選んだ側でも、相手の旅団長を倒せば手札が戻り、次の攻めに移れます。同じ戦いで2体以上倒しても補充は1回だけで、最後の旅団長を倒して勝負が決まった戦いでは補充しません。
ポケモンカードと同じく、倒した側へのご褒美です。ただし、増えるのは6枚までで、上限を超えては増えません。手札が残っている側にはご褒美が小さく、使い切って攻め込んだ側ほど大きく戻ります。モンコレでは番のたびに戻った6枚の手札を、ここでは旅団長を倒したご褒美として戻しています。この補充を入れた後の勝率は、これから測り直して確かめていきます。
先攻と後攻の差を各ゲームがどう埋めてきたかは、先攻と後攻はどちらが有利?で比べています。ゲームの世界設定やカードは独自に作ったもので、各作品の公式作品・派生作品ではありません。詳しくは背界の旅団の公式サイトをご覧ください。
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