90年代のカードゲームは何が新しかった?遊戯王からアクエリアンエイジまで

遊戯王OCGは、発売された当初、どんなに強いモンスターでも手札からそのまま出せました。
ガンダムウォーでは、山札がそのまま自分の命で、山札が尽きると負けでした。
そしてアクエリアンエイジでは、手札のどのカードでも、裏返せばキャラクターの力の源になりました。

1996年4月、アメリカ生まれのカードゲーム『マジック:ザ・ギャザリング』(マジック)の日本語版が出ました。パックでカードを集め、自分で組んだカードの束(デッキ)で戦う「トレーディングカードゲーム」(TCG)の始まりの作品です。その後の数年で、日本でも次々にカードゲームが作られます。どれもマジックを手本にしながら、同じものにはしませんでした。では、90年代の日本で生まれたカードゲームは、それぞれどこを作り替え、何が新しかったのでしょうか。

この記事で分かること

  • 「カードを出す力」の作り方が、作品ごとに違った:マジックの土地にあたるものを、ポケモンカードは1匹ずつのエネルギーに、アクエリアンエイジは裏返したどのカードにも変えました。
  • 勝ち方も作り替えられた:モンコレは相手の本陣を落とすと勝ち、ガンダムウォーは相手の山札を0枚にすると勝ちでした。
  • キャラクターが「育つ」「重なる」:ポケモンカードの進化と、アクエリアンエイジの「ブレイク」は、カードを上に重ねて強くする仕組みです。

手本になったマジックの形

90年代の国産カードゲームを見る前に、手本になったマジックの形を確かめておきます。マジックでは、自分の番に「土地」のカードを1枚まで場に出せます。土地からは、呪文やクリーチャー(怪物や兵士)を出すための「マナ」という魔法の力が生まれます。土地が増えるほど、大きな呪文が使えるようになる作りです。そして、20点あるライフを先に0にした方が勝ちです。

カードを出すための力(資源)を、専用のカードで少しずつ増やす。相手のライフを削りきって勝つ。この二つが、のちのカードゲームが作り替えていく出発点になりました。土地のカードの違いは土地カードとは?で詳しく比べています。カードゲーム全体の歩みはTCGの歴史で書きました。

1996年 ポケモンカード:エネルギーを、1匹に付ける

マジックの日本語版と同じ1996年の10月20日、『ポケットモンスターカードゲーム』(今のポケモンカードゲーム)が発売されました。ゲーム『ポケットモンスター』のポケモンで戦うカードゲームで、初の本格的な国産TCGとされています。

ポケモンカードにも、マジックの土地にあたる「エネルギー」のカードがあります。違うのは置き場所です。エネルギーは場全体の力ではなく、ポケモン1匹に付けます。手札から付けられるのは1回の番に1枚だけで、ワザを使うにはそのポケモンに必要な数のエネルギーが付いていなければなりません。どのポケモンを育てるかを、エネルギーの付け方で決めるゲームです。

もう一つは「進化」です。進化したポケモンのカードは、元のポケモンのカードの上に重ねて置きます。ゲームのポケモンが進化する体験を、カードを重ねる動きにしました。勝ち方も変わっていて、相手のポケモンを倒すたびに「サイド」と呼ぶ伏せたカードを1枚取り、先に全部取りきった方が勝ちです。

1997年 モンコレ:土地は、マナではなく戦場

1997年9月には、『モンスター・コレクション』(モンコレ)が富士見書房から発売されました。小説『ロードス島戦記』で知られるゲーム制作集団グループSNEが作った、独自のファンタジー世界「六門世界」で戦うカードゲームです。

モンコレにも「地形」のカードがあります。ただし、マナを出すためのものではありません。2人のあいだに縦3列・横4行、12か所のマスがあり、そこへ地形のカードを置いて地図を作ります。モンスターは地形の上にしかいられないので、自分の本陣から相手の本陣まで、地形をつないで道を作り、部隊を進めていきます。相手の本陣へ攻め込んで勝てば勝利です。相手のライフを削る代わりに、地図の上で陣地を取り合う「陣取りゲーム」にしたのが、モンコレの新しさでした。

戦いではサイコロを振り、手札は番の始めに上限の6枚まで戻ります。1枚ずつ引くマジックとは、手札の増え方も違いました。進み方はモンコレの進軍、手札の戻り方は手札は何枚まで持てる?、サイコロの使い方はサイコロやコインは要る?で詳しく書いています。

1999年 ガンダムウォー:山札が、そのまま命

1999年2月には、バンダイから『ガンダムウォー』の第1弾が出ました。アニメ『機動戦士ガンダム』から始まるガンダムシリーズのモビルスーツ(人が乗って戦うロボット)や人物で戦うカードゲームです。

カードを出す力は「国力」と呼ばれ、「ジェネレーション」(G)のカードが生み出します。ここはマジックの土地に近い形です。変わっていたのは勝ち方でした。デッキはちょうど50枚で、最初の手札を引いた残りの山札が、そのまま「本国」になります。攻撃を受けても、守りに出たユニットで防ぎきれなかった分は、ふつうは無効です。相手が守りに出せないときに攻撃が通ると、本国のカードが減ります。そして本国が0枚になった方が負けです。ライフの数字を別に持たず、山札そのものを命にしました。

もう一つの特徴は、ガンダムシリーズのさまざまな作品のモビルスーツや人物を、作品の枠を超えて一つのデッキに組めたことです。

1999年 遊戯王OCG:カードを出す力が、そもそもない

1999年2月4日、コナミから『遊☆戯☆王オフィシャルカードゲーム』(遊戯王OCG)の「Vol.1」が発売されました。漫画『遊☆戯☆王』の中で登場人物たちが遊ぶ架空のカードゲームを、本物のカードゲームにした作品です。

遊戯王OCGには、マジックの土地やポケモンカードのエネルギーにあたる、カードを出すための資源のカードがありません。発売と同時に決められた最初のルールでは、モンスターの召喚に制限がなく、どのレベルのモンスターでもそのまま出せました。公式大会のために作られたルールで、レベル5以上のモンスターを出すには、場の自分のモンスターを「生け贄」(今の呼び名は「リリース」)にする決まりが加わります。レベル5・6なら1体、7以上なら2体です。資源を貯める代わりに、場のモンスターを差し出して大きなモンスターを呼ぶ。この形は今も続いています。

伏せておいた罠のカードを、相手の番に表に返して使えるのも、遊戯王OCGらしさです。攻撃してきた相手を、伏せたカード1枚で返り討ちにする駆け引きが生まれました。

1999年 アクエリアンエイジ:どのカードでも、力の源になる

1999年7月30日、ブロッコリーから『アクエリアンエイジ』の最初のパック「覚醒の乙女たち」が発売されました。どのアニメや漫画の原作もない、オリジナルの世界のカードゲームです。プレイヤーは、人の隠れた力を目覚めさせる「マインドブレイカー」になり、6つの勢力に分かれたキャラクターを味方にして戦います。初期の設定では、超能力や魔力を持つ者は女性だけとされ、カードには美少女のキャラクターが並びました。

力の源は、裏返したカード

アクエリアンエイジでは、カードを出したり攻撃したりする力の源を「パワーカード」と呼びます。ところが、パワーカードという専用のカードはありません。手札のカードを裏返して、キャラクターの下に置いたものがパワーカードになります。キャラクターごとに決まった「精神力」の数だけパワーカードを置くと、そのキャラクターを味方にできます。攻撃や守りにも、このパワーカードを払います。手札の1枚を、そのまま使うか、裏返して力にするか。どのカードも資源になる分、毎回その配分に悩むゲームでした。

キャラクターが「ブレイク」して育つ

このゲームのいちばんの特徴は「ブレイク」です。キャラクターの内に眠る力が目覚めたという設定で、キャラクターのカードの上に、成長した姿の「ブレイクカード」を重ねて強くします。少女の成長を、カードを重ねる動きで表したのです。さらに、相手の側にいるキャラクターをブレイクして、自分のものにしてしまう「横取りブレイク」もありました。

守りに出さずに攻撃を受けると、受けた攻撃の分だけ自分の山札をめくり、キャラクターなら自分の側に加わり、それ以外のカードはダメージになります。ダメージが10たまると負けです。1対1だけでなく、3人以上やタッグでも遊べる作りでした。

2000年代へ:デュエル・マスターズとワンピースカード

90年代の作り替えは、その後の作品にも続きます。2002年に発売された『デュエル・マスターズ』は、マジックの仕組みを土台に、子ども向けの漫画雑誌『月刊コロコロコミック』の読者に合わせて作られたカードゲームです。手札のどのカードでも1番に1枚、「マナゾーン」に置いて資源にでき、相手の5枚の「シールド」(盾)を割ってから、最後の一撃で勝ちます。2022年の『ONE PIECEカードゲーム』(ワンピースカード)は、カードを出す力の「ドン!!」を、デッキとは別の束にしました。資源をどう作るかは、30年たった今も、カードゲームごとの個性が出るところです。今遊ばれている作品の違いは人気カードゲーム9作は何が違う?で比べています。

90年代の国産カードゲームは、何が新しかったか

こうして並べると、90年代の国産カードゲームは、マジックの「土地からマナを出し、ライフを削って勝つ」形を、それぞれの世界に合わせて作り替えていたことが分かります。

作品年新しかったこと
ポケモンカードゲーム1996年エネルギーをポケモン1匹に付ける。進化は上に重ねる。サイドを取りきって勝つ
モンスター・コレクション1997年地形のカードで地図を作り、相手の本陣を落として勝つ陣取り
ガンダムウォー1999年山札が「本国」で、そのまま命になる。作品の枠を超えて組める
遊戯王OCG1999年カードを出す資源のカードがない。大きなモンスターは場のモンスターを生け贄に出す
アクエリアンエイジ1999年どのカードも裏返せば力の源になる。キャラクターがブレイクして育つ

その時代に育った、私と『背界の旅団』

私は1997年、小学5年生のときに、発売されたばかりのモンコレに出会いました。売り場には毎年のように新しいカードゲームが並び、どれも遊び方が違っていた時代です。私が制作したカードゲーム『背界の旅団』は、そのモンコレの「土地をつないで部隊を進め、相手の本陣を目指す」遊び方を、iPhoneで一戦を短く遊べる形に作り直したものです。ゲームの世界設定やカードは独自に作ったもので、各作品の公式作品・派生作品ではありません。

『背界の旅団』のカード「リザードマン軍旗長」 『背界の旅団』のカード「ドワーフ鍛冶職人」 『背界の旅団』のカード「バードマン翼将」
『背界の旅団』のリザードマン軍旗長、ドワーフ鍛冶職人、バードマン翼将。地図の上を部隊で進み、相手の本陣を目指します。App Storeで遊ぶ(無料)

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本記事は個人による非公式の解説です。各作品の権利は各権利者に帰属します。『モンスター・コレクション』の権利は株式会社グループSNE、株式会社KADOKAWAほか各権利者に帰属します。

参考資料

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