レベル3のオーガなのに、攻撃力も防御力も7。
同じレベルの仲間のオーガは、攻撃力3・防御力3が普通でした。
それなのにこのカードは、モンスターを呼ぶ場所である自分の本陣にさえ出せませんでした。
国産のカードゲーム『モンスターコレクション』(モンコレ)に、「オーガ・パワーブラザーズ」というカードがあります。1999年の拡張セット『空中庭園の降臨』で登場した、オーガの兄弟のカードです。数字だけ見れば並外れて強いのに、置ける場所がほとんどない。なぜこんな極端なカードが作られ、遊ぶ人の記憶に残ったのでしょうか。
この記事で分かること
- レベルの割に、とびぬけて強い:レベル3のユニットとしては最大の攻撃力と防御力で、同じレベルのオーガの倍以上でした。
- 奇数の土地にしかいられない:その代わり、リミットが奇数の土地にしか進めず、いることもできません。本陣のリミットは10なので、本陣にも呼べません。
- 何度も帰ってきた:10周年記念のセットに再録され、2012年には兄弟がそろうと強くなる新しい姿で登場しました。
オーガとは、人を食う大きな鬼
オーガは、ヨーロッパの昔話に出てくる、人を食べる大きな怪物です。体が大きく、力が強く、食い意地が張っている。童話『長靴をはいた猫』に出てくる人食い鬼もオーガです。言葉はフランス語から広まりました。
ゲームでは、同じく荒々しい種族のオーク(トールキンの『指輪物語』で広まった、闇の勢力の兵士の種族)と並んで出てくることが多いのですが、別の種族です。
モンコレのオーガは火の属性に属し、レベル3と5の中くらいの大きさの種族です。大型のモンスターに強い能力を持つカードが多く、戦い方の幅が広い種族でした。のちの時代の設定では、角があり着物を着た者が貴族、昔ながらの人食い鬼の姿の者が奴隷という身分の分かれた種族として描かれています。日本の鬼を思わせる姿です。
1999年、『空中庭園の降臨』に現れた兄弟
モンスターコレクションは、ゲーム制作集団のグループSNEが作り、1997年に富士見書房から発売されたトレーディングカードゲームです。モンスターを召喚して部隊を組み、地形カードで作った地図の上を進んで、相手の本陣へ攻め込みます。
『空中庭園の降臨』は、1999年に出た拡張セットです。全150種で、テーマは地形でした。踏み込んだ相手を待ち受ける「罠」の地形や、戦場の外に置く地形など、変わったカードが多く入っています。前のセットのあとに開かれたカードのアイデアコンテストの優秀作も収録されました。ファンデック(勝つことより、好きなカードで遊ぶことを楽しむデッキ)向けの、扱いにくいカードが多いセットでした。
オーガ・パワーブラザーズは、このセットの火の属性のユニットで、いちばん出にくい「極稀」の2枚のうちの1枚でした。もう1枚は炎の魔神スルトです。イラストは中村亮。カードに添えられた物語の一文(フレーバーテキスト)は、モンコレの小説シリーズ『ホーリィの手記』から取られていて、兄弟を「アニキ」と慕う一言が書かれています。
レベル3なのに、攻撃力7・防御力7
モンコレのモンスターには、強さの目安になる「レベル」があります。地形カードには「リミット」という数字があり、その土地にいられるモンスターのレベルの合計の上限になっています。レベルが低いほど、狭い土地にも入りやすく、仲間と組ませやすいのです。
オーガ・パワーブラザーズは、そのレベルが3。それでいて攻撃力7・防御力7という数字を持っていました。同じレベル3の基本的なオーガの戦士は攻撃力3・防御力3です。のちに出たレベル5のオーガ「鬼斬りゴンドウ」でも、攻撃力5・防御力4でした。レベル3のユニットとしては最大の数字です。
軽いのに強い。普通なら、どの部隊にも入れたくなるカードです。ところが、この兄弟には大きな欠点がありました。
奇数の土地にしかいられない
オーガ・パワーブラザーズには「美肉の欠点」という能力があります。中身は、リミットが奇数の地形にしか進軍できず、それ以外の地形には存在もできない、というものです。
問題は、モンコレの地形の多くが、リミットが偶数だったことです。モンスターを普通に呼び出す場所である本陣も、リミットは10。つまりこの兄弟は、手札にあっても本陣に呼び出せず、そのままでは場に出すことさえできません。『空中庭園の降臨』に入っていた地形を見ても、リミットは6・8・10がほとんどで、奇数は秘密通路の3、カジノの7、乾いた大地の9などわずかでした。
使うには、奇数のリミットの地形を用意し、そこへ兄弟を届ける道筋まで考えてデッキを組む必要があります。しかも、いる土地を別の地形に張り替えられると、そこにいられなくなります。圧倒的な数字と、極端に狭い居場所。この釣り合いが、オーガ・パワーブラザーズというカードのすべてでした。
何度も帰ってきたムキムキ兄弟
使いにくいカードでしたが、兄弟はその後も何度もカードになっています。ルールとカードの表記が見直された時期には、再録だけを集めたセット『放浪王の帰還』に入りました。2009年には、モンコレ10周年を記念したセット『千年皇国の栄光』にも再録されています。このセットの再録カードは、人気投票で上位だったものが中心でした。
この再録版では、戦いの最中に手札から駆けつける「即時召喚」ができるようになりました。本陣には呼べなくても、奇数の土地での戦いに突然現れることができたのです。
2012年、販売元がブシロードに移ってからのセット『ヴァローカの精霊祭』では、まったく新しい姿で登場します。種族に「パワーブラザー」が加わり、奇数の土地の制限はなくなりました。その代わり、素の数字は攻撃力3・防御力3。自分の部隊にパワーブラザーが2体以上いると、攻撃力と防御力がそれぞれ3ずつ上がります。同じセットには、手札のオーガやジャイアントを自分のいる土地へ呼び出せる英雄「巨人使いアレックス」も入りました。アレックス自身もパワーブラザーなので、呼び出した兄弟とその場で2体がそろいます。「兄弟」という名前が、ルールの形になったのです。
私のオーガデッキと、兄弟が残したもの
『空中庭園の降臨』でオーガ・パワーブラザーズが出てからは、なんとかオーガデッキを形にしようとしていました。
数字を見ただけで使いたくなるのに、そのままでは場にも出せない。だからこそ、このカードを中心にどう組むかを考えること自体が、遊びになるカードでした。
| カードの性質 | そこから生まれたもの |
|---|---|
| レベル3で攻撃力7・防御力7 | → 一目で「使いたい」と思わせる強さ |
| 奇数の土地にしかいられない | → 地形の数字からデッキを考える工夫 |
| 本陣のリミットは10 | → 呼ぶ場所さえ自分で用意する難しさ |
| 土地を張り替えられると消える | → 相手との駆け引き |
| 兄弟という名前 | → 2体そろって強くなる2012年の新しい姿 |
『背界の旅団』の土地と強さの釣り合い
私が制作したカードゲーム『背界の旅団』でも、土地ごとの上限(3〜5)が、その土地へ進軍できる部隊の合計レベルを縛ります。強いモンスターほど、入れる土地と組める仲間が限られる。オーガ・パワーブラザーズのように、数字の強さと居場所の狭さを天秤にかける考え方は、この仕組みの中に生きています。ゲームの世界設定やカードは独自に作ったもので、モンコレの公式作品・派生作品ではありません。詳しくは『背界の旅団』の公式サイトをご覧ください。
この記事を共有する