モンコレのサボテンマンは、攻撃力も防御力も1しかないサボテンのモンスターです。
それなのに、テレビCMにまで出た、モンコレの顔でした。
そして十数年後には、仲間が増えて「サボテンマン」という種族そのものになりました。
カードゲームで人気が出るのは、ふつうは強いカードや見た目の格好いいカードです。1997年に出た国産のカードゲーム『モンスター・コレクション』(モンコレ)にも、竜や騎士、魔王がたくさんいました。その中で、数値だけ見れば弱いサボテンがなぜ長く覚えられ、20年後にも新しいカードが作られたのか。最初の1枚から順にたどります。
この記事で分かること
- 弱さにはトゲがあった:倒されると、相手の手札をさいころの目の数だけ捨てさせる、ひと癖ある能力を持っていました。
- カードがマスコットになった:CMや大会告知の漫画に出て、ゴブリンやサキュバスと並ぶモンコレの顔になりました。
- 1枚から一族へ:金色の親分や兄弟が生まれ、2011年には「サボテンマン」という種族まで作られました。
攻撃力1・防御力1の、サボテンのモンスター
モンスターコレクションは、ゲーム制作集団のグループSNEが作り、1997年9月に富士見書房から発売されたトレーディングカードゲームです。モンスターのカードを召喚して部隊を組み、カードで作った地図の上を進んで、相手の本拠地を目指します。
サボテンマンは、この最初の基本セットに入っていた1枚です。属性は土、種族は植物のモンスターをまとめた「プラント」。レベルは3で、攻撃力は1、防御力も1。歩いて進むモンスターで、絵は田中としひさが描いています。2000年9月に出た改訂版の基本セット『モンスター・コレクション2』にも、同じ数値で再び収録されました。
モンコレのレベルは、そのモンスターの強さの目安であり、部隊に入れたときに場所をどれだけ取るかを表す数字でもあります。土地ごとに、いられるモンスターのレベルの合計に上限があるからです。レベル3の場所を取るのに、殴る力も耐える力も1。数字だけを見ると、部隊に入れる理由が見当たらないカードでした。
倒されると、相手の手札が散る
サボテンマンの持ち味は、数値ではなく能力にありました。「トゲトゲアタック」という名前の能力で、サボテンマンが倒されたとき、相手は手札を、さいころを1個振った目の数だけ捨てなければなりません。
手札は、次に召喚するモンスターや、戦いで使う魔法の元手です。相手はサボテンマンを倒さないと先へ進めないのに、倒すと手札を失います。運が良ければ一度に何枚も捨てさせられるし、悪ければ1枚で終わる。小さなサボテンが、倒した相手にトゲを刺して去っていく。弱いのに放っておけない、この割り切った作りが、サボテンマンを覚えられるカードにしました。
『モンスター・コレクション2』の版では、この能力が戦闘中に1回だけ使えるよう整えられています。それでも「倒されると手札を減らす」という芯は変わりませんでした。
弱いカードが、モンコレの顔になった
サボテンマンは、ゲームの中だけの存在では終わりませんでした。初代のサボテンマンはモンコレのマスコットのように扱われ、テレビCMに出演しています。モンコレのモンスターたちが登場する漫画や、大会を知らせる漫画、さらにはほかのカードのイラストにも顔を出し、そこではゴブリン(小柄でずる賢い小鬼)やサキュバス(人を誘惑する魔性の女性)と一緒に行動していました。
強い竜や騎士は、そのカードを引いた人の記憶に残ります。一方で、弱いサボテンが、CMや漫画やほかのカードの隅にいつも映っている。カードとしての強さとは別のところで、サボテンマンはモンコレで遊ぶ人みんなが知っているキャラクターになっていきました。
金色の親分と、兄弟が生まれた
マスコットになったサボテンマンには、やがて仲間のカードが作られていきます。
2000年:ゴールデン・サボテンマン
2000年3月のセット『太陽王の覚醒』で、金色のサボテンマンが登場しました。レベル3、攻撃力1・防御力1という数値は初代と同じです。ただし属性は土ではなく聖で、能力は初代と正反対。手札を捨てさせるのではなく、選んだプレイヤーに手札をさいころの目の数だけ補充させます。初代のトゲを裏返したような、遊び心のあるカードでした。
2003年:呼び戻すロードと、兄弟たち
2003年には、雑誌『ドラゴンエイジ』2003年8月号の付録として「サボテンマン・ロード」が配られました。捨て山(使い終わったカードの置き場)から、名前に「サボテンマン」を含むモンスターを呼び戻す能力を持っています。
2003年9月のセット『新聖紀の胎動』では、さらに2枚が加わりました。「サボテン・ブラザー」は、名前に「サボテンマン」を含む味方を大きく強化する弟分です。「夕陽のサボテンマン」は、倒されたときに味方全員を、さいころの目の数だけ強くします。どちらも数値は低く、ほかのサボテンマンと組んで初めて生きるカードです。1枚の人気者が、名前でつながる一族へと広がっていきました。
ついに「種族」になり、伝説として帰ってきた
販売元が変わったあとも、サボテンマンは作られ続けます。2011年2月のセット『暗黒卿の秘儀』では、それまで「プラント」に含まれていたサボテンマンが、「サボテンマン」という独立した種族として登場しました。部隊の中のサボテンマンの数だけダメージを与える「荒野のサボテンマン」と「サボテン三銃士」、味方でないモンスターまでサボテンマンの種族に変えてしまう「サボテン・マム」、サボテンマンがいると手札を補って相手の手札を削る地形「謎のサボテン城」。数がそろうほど強くなる、結束の固い一族です。
2013年12月には、ブシロードが過去のカードを新しい能力でよみがえらせる『伝説のブースターパック 不滅なる聖騎士』を出し、そこにサボテンマン本人が戻ってきました。レベルは2に下がり、攻撃力と防御力は3に上がっています。能力も、相手のモンスターにダメージを与え、生き残られたら相手の手札を1枚捨てさせる形に変わりました。倒されてから刺すトゲが、自分から刺しにいくトゲになったのです。
さらに2017年6月、モンコレ20周年を記念したサプライセット『召喚士』の特典カードに、ゴールデン・サボテンマンが選ばれました。今度はレベル5、攻撃力・防御力ともに5の「英雄」として描かれ、フレーバーテキスト(カードに添えられた物語の一文)ではサボテンたちの神として語られています。
サボテンマンの変身を並べると
攻撃力1のサボテンは、20年のあいだに次のように姿を変えてきました。
| 時期 | サボテンマンの姿 |
|---|---|
| 1997年 最初の基本セット | 攻撃力1・防御力1。倒されると相手の手札を捨てさせる |
| CM・漫画・ほかのカードのイラスト | 弱いカード → モンコレのマスコット |
| 2000年 ゴールデン・サボテンマン | 手札を捨てさせるトゲ → 手札を補充させる金色の親分 |
| 2003年 ロード・ブラザー・夕陽 | 1枚のカード → 名前でつながる一族 |
| 2011年 暗黒卿の秘儀 | プラントの一員 → 独立した種族「サボテンマン」 |
| 2013年 不滅なる聖騎士 | 倒されてから刺すトゲ → 自分から刺しにいくトゲ |
| 2017年 20周年の特典カード | マスコット → レベル5の英雄 |
強いから愛されたのではなく、弱いのにひと癖あり、いつも画面の隅にいたから愛された。そうして愛されたから、何度も新しい役を与えられた。サボテンマンは、カードゲームのキャラクターが数値の外側で育っていく、いちばん分かりやすい例です。
背界の旅団にも、植物の人がいる
私は1997年、小学5年生のときにモンコレに出会いました。私が制作したカードゲーム『背界の旅団』は、そのモンコレで遊んだ体験から生まれたものです。
『背界の旅団』には、土の属性に「盆栽マン」というカードがいます。種族はスピリット(精霊)のレアカードです。サボテンマンと並べると、どちらも「植物+マン」の名前を持つ1枚ですが、ゲームの世界設定やカードは独自に作ったもので、モンコレの公式作品・派生作品ではありません。カードゲームの楽しさは、強いカードを引いたときだけでなく、妙に気になる1枚と出会ったときにもあります。詳しくは『背界の旅団』の公式サイトをご覧ください。
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