モンコレの召喚術師カードは、デッキの枚数に数えない1枚でした。
しかも、相手も召喚術師を使っているときにしか使えませんでした。
一方、ONE PIECEカードゲームのリーダーは、ライフを持ち、自分で攻撃もします。
カードゲームには、遊ぶ人の分身として、デッキとは別に1枚だけ置くカードがあります。ONE PIECEカードゲームでは「リーダー」、1997年に出た国産のカードゲーム『モンスター・コレクション』(モンコレ)では「召喚術師」と呼ばれました。同じ「自分を表す1枚」なのに、ゲームによって任される仕事はまるで違います。その1枚は何のためにあるのか。各ゲームの決まりを並べて見ていきます。
この記事で分かること
- 役割は大きく3つある:デッキに入れられるカードを縛る、ライフを持って攻撃を受ける、試合の間ずっと効く効果を与える。
- モンコレの召喚術師は、ルールを書き換えるカードだった:手札の上限や、戦いの先攻を決めるサイコロの振り方まで、1枚で変わりました。
- 遊戯王やポケモンカードには、この1枚がない:遊ぶ人そのものが、ライフやサイドを持つ形です。
遊ぶ人の分身になる1枚
多くのカードゲームでは、遊ぶ人自身はカードになっていません。遊戯王OCG(漫画『遊☆戯☆王』から生まれた、モンスター・魔法・罠で戦うカードゲーム)では、遊ぶ人が8000のライフポイントを持ち、これを先に0にした方が勝ちです。ポケモンカードゲームでは、相手のポケモンを倒すたびに、最初に伏せておいた6枚の「サイド」から1枚ずつ取り、先に取り切った方が勝ちます。デュエル・マスターズ(タカラトミーのカードゲーム)では、遊ぶ人の前に5枚の「シールド」を並べ、すべて割られた後に直接攻撃を受けると負けです。どれも、守るものは遊ぶ人の前に置かれた数やカードの束で、遊ぶ人を表すカードはありません。
これに対して、遊ぶ人の分身を1枚のカードにしたゲームがあります。分身のカードはデッキとは別に用意され、ゲームの始めから場に置かれます。その1枚に何を任せるかが、ゲームごとに違うのです。
モンコレの召喚術師:ルールを書き換える1枚
モンスターコレクションは、ゲーム制作集団のグループSNEが作ったトレーディングカードゲームです。その世界では、遊ぶ人は「召喚術師」としてモンスターを呼び出して戦う、という設定でした。ただし最初のセットには、召喚術師そのもののカードはありません。
召喚術師カードが初めて登場したのは、1990年代の終わりに出た拡張セット『黄金樹の守護者』です。左下に六芒星の印が付いた22枚で、タロットの大アルカナ(「魔術師」や「愚者」など22枚の絵札)を題材にした小説の登場人物が描かれていました。
デッキに数えず、1枚だけ選ぶ
召喚術師カードは、デッキの枚数制限とは別に1枚だけ選ぶ、遊ぶ人の分身です。1枚ごとに、デッキの枚数、デッキの組み方の制限、そして試合の間ずっと自分の軍に効く追加のルールが書かれていました。
追加のルールは、ゲームの根本に手を入れるものでした。たとえば次のようなものです。
- 手札の上限を5枚にする
- 戦いの先攻を決めるとき、サイコロを2個振って高い目を使う
- 自分の本拠地「本陣」にいられるモンスターのレベルの合計の上限を12に広げる
- 地形カードを、地図のどの空き地にも置ける
どの召喚術師を選ぶかで、同じカードを使っても戦い方が変わります。召喚術師は戦場で戦うカードではなく、その試合のルールそのものを自分向けに書き換えるカードでした。
相手も使うときだけ
召喚術師カードには、もう一つ決まりがありました。原則として、相手も召喚術師を使っているときにしか使えないのです。片方だけがルールを書き換えれば、もう片方は不利になります。使うなら、お互いに。例外として、デッキの枚数が青地で書かれた「青術師」は、相手が使っていなくても使えました。
後の拡張セット『魔法帝国の興亡』では、召喚術師は新しい形で再び登場します。カードに勢力が書かれ、仲間と組んで戦う団体戦に使えるようになりました。
ワンピースのリーダー:ライフを持ち、自分でも戦う
ONE PIECEカードゲーム(漫画『ONE PIECE』の登場人物で戦う、バンダイのカードゲーム)では、リーダーのカードがちょうど1枚、デッキは50枚と決まっています。リーダーは試合の間ずっと「リーダーエリア」に残り、効果で動かされることはありません。このリーダーに、ゲームの中心になる仕事がいくつも集まっています。
色でデッキを縛る
デッキに入れられるのは、リーダーの色を含むカードだけです。赤のリーダーを選べば、赤のカードでデッキを組みます。どのリーダーを使うかが、デッキ全体の方向を決めます。モンコレとの違いはモンコレはなぜ属性を混ぜて組める?でも書きました。
ライフを持つ
ライフを持つのはリーダーだけです。試合の始めに、リーダーに書かれた数だけ、デッキの上からカードを伏せて「ライフ」として置きます。相手のリーダーへの攻撃が通ると1ダメージで、ライフの上から1枚が手札に移ります。ライフが0枚のときにさらにダメージを受けると負けです。
自分でも攻撃し、効果も持つ
リーダーは守られるだけではありません。自分から相手のリーダーやキャラクターへ攻撃できます。カードを出すための資源「ドン!!」を付けて、パワーを上げることもできます。さらに、リーダーごとに固有の効果が書かれていて、場にいる間ずっと働きます。
モンコレの召喚術師がルールを書き換える「審判」だったとすれば、ワンピースのリーダーは、デッキの色を決め、命を背負い、自分でも戦う「船長」です。ワンピースカードの工夫とは?では、リーダーとドン!!の仕組みをさらに詳しく書きました。
ほかのゲームの「大将」
マジック:統率者戦
マジック:ザ・ギャザリング(1993年にアメリカで生まれた、最初のトレーディングカードゲーム)には、「統率者戦」という遊び方があります。伝説のクリーチャー1枚を「統率者」に選び、統率者を含めてちょうど100枚のデッキを組みます。デッキに入れられるのは、統率者の色に含まれるカードだけです。統率者は専用の場所から何度でも呼び出せますが、呼び出すたびに追加の費用がかかります。遊ぶ人のライフは40点で、同じ統率者から戦闘で合計21点のダメージを受けても負けになります。統率者は、デッキを縛り、何度でも戻ってくる切り札です。
Shadowverse EVOLVE
スマートフォンのゲーム『シャドウバース』から生まれた紙のカードゲームでは、リーダーのカードを1枚置きます。デッキのカードは、リーダーと同じ「クラス」か、どのクラスでも使えるカードに限られます。リーダーの体力は20で、0以下になると負けです。
カードファイト!! ヴァンガード
ヴァンガード(ブシロードのカードゲーム)では、中央に置く「ヴァンガード」のユニットが遊ぶ人の分身です。手札から上に重ねる「ライド」で成長していきます。ヴァンガードが受けたダメージが6枚たまると負けです。分身そのものが、試合の中で姿を変えていきます。
ドラゴンボールスーパーカードゲーム フュージョンワールド
漫画『ドラゴンボール』の登場人物で戦うこのゲームでも、リーダーのカードが1枚です。デッキは、リーダーの持つ色のカードだけで組みます。試合の始めにデッキの上から8枚をライフとして置き、ダメージを受けると手札に移ります。リーダーは自分でも攻撃し、条件を満たすとカードを裏返して「覚醒」します。
大将の1枚が担う役割を並べると
| ゲーム | 大将の1枚 | 主な役割 |
|---|---|---|
| モンスターコレクション | 召喚術師(拡張セットから) | デッキの枚数と組み方を決める → 試合の間ずっと効く追加ルールを与える |
| ONE PIECEカードゲーム | リーダー | 色でデッキを縛る → ライフを持つ → 自分でも攻撃し、固有の効果を持つ |
| マジック(統率者戦) | 統率者 | 色でデッキを縛る → 何度でも呼び出せる切り札 |
| Shadowverse EVOLVE | リーダー | クラスでデッキを縛る → 体力20を持つ |
| ヴァンガード | ヴァンガード | 分身のユニット → 重ねて成長し、受けたダメージで勝敗が決まる |
| ドラゴンボール フュージョンワールド | リーダー | 色でデッキを縛る → ライフを持ち、攻撃し、覚醒する |
| 遊戯王OCG | なし | 遊ぶ人が8000のライフポイントを持つ |
| ポケモンカードゲーム | なし | 6枚のサイドを先に取り切った方が勝つ |
| デュエル・マスターズ | なし | 5枚のシールドを割られた後の直接攻撃で負ける |
並べてみると、大将の1枚の役割は「デッキを縛る」「命を持つ」「ずっと効く効果を与える」の組み合わせでできています。リーダーがいるゲームでは、どのリーダーを選ぶかが、デッキ作りの最初の一手になります。モンコレの召喚術師は、命を持たず、ルールを書き換えることに役割を絞った、少し変わった大将でした。
背界の旅団の大将は、地図の上にいる
私が制作したカードゲーム『背界の旅団』は、モンコレで遊んだ体験から生まれたものです。『背界の旅団』には、デッキとは別に置くリーダーのカードはありません。代わりに大将になるのは、戦場にいるモンスターです。
試合の始めに、最初の手札から自分の本陣へ呼び出した1〜3体(レベルの合計は5まで)が「旅団長」になります。旅団長は軍を率いる大将で、相手の旅団長をすべて倒せば勝ちです。リーダーのカードのように別の場所で守られているのではなく、仲間と同じように地図の上を進み、戦いにも出ます。
だから大将の役割は、ルールを書き換えることでも、デッキの色を決めることでもなく、「どこにいるか」になります。前に出して攻めるか、後ろに残して守るか。戦いでは隊列のどこに置くか。相手の大将がどこにいるかを地図の上で追いかけることが、そのまま勝ち方です。勝ち方の決め方はカードゲームの勝利条件とは?で詳しく書きました。
ゲームの世界設定やカードは独自に作ったもので、各作品の公式作品・派生作品ではありません。詳しくは『背界の旅団』の公式サイトをご覧ください。
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