ワンピースカードの工夫とは?山札をシャッフルしない理由

ポケモンカードゲームでは、山札の中身を見てカードを取ったら、山札全体を切り直すのが原則です。
ONE PIECEカードゲームでは、山札から探す効果の多くが、上から5枚ほどを見るだけで、残りは山札の下へ戻します。
2026年10月までに出たONE PIECEカードゲームのカードで、山札から探して切り直す効果は6種類しかありません。

カードゲームは1993年のマジック:ザ・ギャザリングから30年あまり、同じ困りごとを抱えてきました。切り直しに時間がかかる。資源のカードが来ない。相手の番は見ているだけ。一度差がつくと逆転できない。2022年に出たONE PIECEカードゲームは、こうした困りごとを、ルールの土台からどう解いたのでしょうか。

この記事で分かること

  • 山札を切り直さない:探す効果を「上から見て、残りは下へ」の形にそろえ、切り直す場面そのものを減らしています。
  • 資源は別の山から来る:支払いに使う「ドン!!」は山札に入れない別の10枚なので、資源のカードが来ない事故が起きません。
  • やられるほど手札が増える:ダメージを受けるとライフのカードが手札に入り、そのカードの効果が出ることもあります。

30年分の困りごとの後に、2022年のゲーム

ONE PIECEカードゲームは、漫画『ONE PIECE』のカードゲームで、2022年7月8日にバンダイから発売されました。カードゲームの歩みはTCGの歴史で書いたとおりで、マジック(1993年にアメリカで生まれたカードゲーム)、ポケモンカードゲーム、遊戯王OCG(漫画『遊☆戯☆王』のカードゲーム)と、先に出たゲームが長く遊ばれてきた後の登場です。

遊ぶ人は、漫画の人物を描いた「リーダー」のカード1枚と、ちょうど50枚のデッキ、そして「ドン!!カード」10枚の束を用意します。リーダーに書かれたライフの数だけ、デッキの上からカードを伏せて置き、ライフが0のときにリーダーがダメージを受けると負けです。デッキの枚数の決め方はデッキはなぜ40枚・60枚?で比べました。ここからは、この土台の上に置かれた工夫を一つずつ見ていきます。

山札を切り直さない:上から見て、下へ戻す

ポケモンカードには、山札から特定のポケモンを選んで場に出し、最後に山札を切る、という効果がたくさんあります。山札の中身を見たら、どこに何があるか分からなくなるようによく混ぜ直す、というのがルールの原則です。効果文に「山札を切る」を含むカードは、再録を含めて2,900枚を超えます。探す効果を使うたびに、デッキ全体を手に取って混ぜ直すことになります。

ONE PIECEカードゲームの探す効果は、書き方が違います。多いのは、デッキの上から5枚(3枚や4枚のこともあります)を見て、条件に合うカードを1枚まで手札に加え、残りを好きな順番でデッキの下に置く、という形です。この形の効果は、再録を含めて160種類を超えます。一方で、デッキ全体から探して切り直す効果は、2026年10月までで6種類だけです。

切らないことで、何が変わるか

この書き方には、いくつかの働きがあります。まず、デッキ全体を手に取って混ぜる回数が減り、そのぶん対戦の時間と手間が減ります。次に、見るのは上の数枚だけなので、欲しいカードが必ず見つかるとは限りません。何でも探し出せる効果よりも運が残り、毎回の展開が変わります。そして、見たけれど取らなかったカードは下へ行くので、しばらく引くことはありません。どの順番で下へ置くかを選べるのも、小さな判断になっています。

山札の下へカードを戻す効果は、先に出たゲームにもあります。ONE PIECEカードゲームの特徴は、それを「探す」効果の基本の形にして、切り直す効果をほとんど作らなかったところにあります。

資源は別の山から:ドン!!デッキ

マジックでカードを使うには「マナ」という力を払います。マナを出すのは土地のカードで、土地はほかのカードと同じデッキに入っています。土地は1回の番に1枚しか出せず、引けなければカードが使えません。反対に土地ばかり引くと、使いたいカードが手札に来ません。ポケモンカードのワザに使うエネルギーも、デッキに入れておくカードで、手札からつけられるのは1回の番に1枚だけです。資源をデッキに入れる仕組みには、引きの偏りで何もできない番が生まれる危険がついて回ります。この話はモンコレはなぜ属性を混ぜて組める?でも書きました。

ONE PIECEカードゲームは、資源を50枚のデッキから外しました。ドン!!カードは別の10枚の束で、自分の番ごとに2枚ずつ(先攻の最初の番だけは1枚)、10枚になるまで場に出てきます。カードを使うときは、場のドン!!を、そのカードのコストの数だけ横に倒します。倒したドン!!は次の自分の番に起き上がるので、場のドン!!は番を追うごとに増えていきます。引きに関係なく決まった速さで資源が増えるので、資源が来なくて何もできない、資源ばかりで手札が足りない、という事故は起きません。

ドン!!は、リーダーやキャラクターに付けて、自分の番の間パワーを1000ずつ上げることもできます。新しいカードを出すか、今いる仲間を強くするか。資源の使い道そのものが、毎回の判断になっています。

色はリーダーが決める

カードの色は赤・緑・青・紫・黒・黄の6つで、デッキに入れられるのはリーダーと同じ色を持つカードだけです。マジックでは、色は土地から出るマナの色に縛られていました。ONE PIECEカードゲームでは、色の縛りをデッキを組むときの決まりに移したので、組んだデッキで色が足りずにカードが使えない、ということは起きません。最初の手札は5枚で、1度だけ全部を戻して引き直せます。引き直しの比べ方はマリガンとは?で詳しく書きました。

相手の番にも守れる:カードに書かれたカウンター

相手の番は、ただ見ているだけになりがちです。相手の番に何かをするカードがあっても、コストを払うための資源を残しておかなければなりません。

ONE PIECEカードゲームのキャラクターカードの多くには、「カウンター」という数字が印刷されています。値は1000か2000です。相手がアタックしてきたとき、守る側は、このカードを手札からトラッシュ(捨て札の置き場)に置くことで、アタックされたリーダーやキャラクターのパワーをその数字だけ上げられます。ドン!!は払いません。

つまり、手札のキャラクターは、自分の番には場に出す仲間で、相手の番には守りの盾にもなります。どのカードを場に出し、どのカードを守りのために残すか。相手の番にも、自分の手札を使って考えることが生まれます。カウンターの値を持たないキャラクターもあるので、デッキを組む段階から、守りに使えるカードの数も考えることになります。

やられるほど手札が増える:ライフとトリガー

ポケモンカードでは、相手のポケモンを「きぜつ」させた側が、サイドというカードを1枚取って手札に加えます。勝っている側に、カードが入る仕組みです。

ONE PIECEカードゲームは、その向きが逆です。リーダーがダメージを受けると、受けた側がライフのカードを1枚、手札に加えます。押されている側ほど、使えるカードが増えていくのです。

さらに、そのカードに「トリガー」と書かれた効果があれば、手札に加える代わりに公開して、その効果を発動することを選べます。相手のキャラクターをKO(場から退場)させたり、そのカード自身を場に出したりする効果が、ダメージを受けた瞬間に飛び出すことがあります。ライフはゲームの始めにデッキの上から伏せて置いたカードなので、何が出るかは誰にも分かりません。追い詰められた側に、最後まで逆転の目が残ります。

困りごとは、こう解かれた

先に出たゲームの困りごとONE PIECEカードゲームの仕組み
探すたびに山札全体を切り直す→ 上から数枚を見て、残りは好きな順番で下へ
資源のカードが来ない・来すぎる→ 資源のドン!!は別の10枚。毎番2枚ずつ増える
色の資源がそろわない→ リーダーの色でデッキを組む
相手の番は見ているだけ→ 手札のカウンター値で、払わずに守る
差がつくと逆転しにくい→ ダメージでライフが手札へ。トリガーで効果も

どれも、先に出たゲームを遊んだ人なら一度は経験した困りごとです。後から出たゲームは、それをカードの効果で一つずつ救うのではなく、ルールの土台の段階で起きにくくしています。先に動く側の得をどう埋めたかは先攻と後攻はどちらが有利?で比べました。

『背界の旅団』も、後から出たゲームとして

私が制作したカードゲーム『背界の旅団』も、カードゲームの30年の後に生まれたゲームです。スマートフォンのアプリなので、山札を切る手間はもともとありません。そのうえで、紙のカードゲームの困りごとのいくつかを、ルールの側で取り除いています。

  • 手札の補充:デッキは30枚で、手番が終わると、手札が6枚になるまで山札から補充されます。1枚ずつ引くのではなく、使った分だけ戻ってきます。
  • 最初の手札:魔法だけの手札で始まると何もできないので、そのときは自動で配り直します。
  • 対抗の解決:相手の宣言に割り込む「対抗」を交互に重ねたときは、最後の一手から逆の順に解決します。紙では数え間違えやすいこの順番を、アプリが処理します。
『背界の旅団』のカード「シーマン魔術書記」 『背界の旅団』のカード「ミラー・スピリット」
『背界の旅団』の水の属性のシーマン魔術書記(レア)とミラー・スピリット(レア)。App Storeで遊ぶ(無料)

後から作るゲームは、先に遊ばれてきたゲームの困りごとを知ったうえで作ることができます。手間はルールとアプリに任せて、どの仲間を呼び、どこへ進むかを考えることに時間を使えるようにしています。詳しくは『背界の旅団』の公式サイトをご覧ください。

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本記事は個人による非公式の解説です。各作品の権利は各権利者に帰属します。ONE PIECEカードゲームの権利は、©尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション、株式会社バンダイほか各権利者に帰属します。ルールは総合ルール ver.1.2.1(2026年8月28日更新)で説明しています。カードの種類数は2026年10月時点の公式カードリストで数えたもので、正確な裁定は各公式のルールをご確認ください。

参考資料

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