「LCG」という言葉は、アメリカのゲーム会社Fantasy Flight Gamesの登録商標です。
2007〜2008年、ランダムなパックで売っていたカードゲームが2つ、中身の決まった箱へ売り方を切り替えました。
そして2027年夏に出るモンスター・コレクションの新作も「LCG」ですが、こちらのLは「Living」ではなく「Limited」です。
マジック:ザ・ギャザリングやポケモンカードのように、中身の分からないパックを買って集めるカードゲームを「TCG」と呼びます。では「LCG」は、TCGと何が違うのでしょうか。そして、なぜわざわざ違う売り方が生まれたのでしょうか。
この記事で分かること
- 違いは「ランダムかどうか」の一点:LCGはパックを開ける前から、入っているカードが全部分かっています。
- LCGは「物語」と「協力」に向かった:みんなが同じカードを持てるので、全員で1つの物語に挑むゲームが作りやすくなりました。
- 弱点は「止まると終わる」こと:定期的な新作が止まったLCGを、遊ぶ人たち自身が引き継いだ例があります。
TCG:中身が分からないから、集める・交換する
TCG(トレーディングカードゲーム)は、1993年のマジック:ザ・ギャザリングから始まった遊び方です。英語圏では「CCG(コレクタブルカードゲーム)」とも呼びます。
TCGのパックは、開けるまで何が入っているか分かりません。カードには「コモン」「レア」などのレア度(出やすさの段階)があり、強いカードや人気のカードほど出にくくなっています。欲しいカードを手に入れるには、パックをたくさん開けるか、ほかの人と交換するか、お店で1枚ずつ買います。名前の「トレーディング」は、この交換のことです。
パックを開けるときのどきどきと、手に入れたレアを見せ合う楽しさが、TCGの大きな魅力です。一方で、同じ1つのカードのために何十パックも開けることがあり、出費の上限が見えません。
LCG:箱を開ける前から、中身が全部分かる
LCG(リビングカードゲーム)は、Fantasy Flight Gamesが名付けた売り方です。デッキを組んで遊ぶところはTCGと同じですが、ランダムなパックがありません。
- 基本セット:最初に買う箱です。すぐに遊べるデッキと、ルールを覚えるための遊び方が入っています。
- 拡張パック:その後、定期的に出ます。中身は決まっていて、どれを買っても同じです。
「リビング(生きている)」は、新しいカードが足され続けて、ゲームが育っていくことを表しています。Fantasy Flight Gamesは、この売り方を「見たままのものが手に入る」と説明しています。
拡張パックの中身は、たとえば「新しいカード20種を3枚ずつ、合わせて60枚」です。同じカードを1つのデッキに3枚まで入れられるゲームが多く、1パック買えば、そのパックのカードはすべて上限まで使えます。レアを引き当てる必要がありません。
2007〜2008年、TCGがLCGへ乗り換えた
最初のLCGは、新しく作られたゲームではありませんでした。Fantasy Flight Gamesがそれまでランダムなパックで売っていた2つのTCGを、売り方だけ切り替えたものです。
| ゲーム | TCGとして始まった年 | LCGに変わった年 |
|---|---|---|
| A Game of Thrones(小説『氷と炎の歌』のカードゲーム) | 2002年 | 2007年の終わり |
| Call of Cthulhu(怪奇小説「クトゥルフ神話」のカードゲーム) | 2004年 | 2008年 |
Call of Cthulhuは、LCGに変わってから「新しいカード20種を3枚ずつ、合わせて60枚」の拡張パックを出すようになりました。この形が、その後のLCGの基本になります。
2012年には、Android: Netrunner(未来の都市で企業とハッカーが戦うカードゲーム)が出ました。元になったのは、マジック:ザ・ギャザリングの作者リチャード・ガーフィールドが1996年に作ったTCG『Netrunner』です。TCGとして生まれたゲームが、16年後にLCGとして生まれ変わりました。拡張は6つで1組の「サイクル」として、毎月1つずつ出ました。
LCGは「物語」と「協力」へ向かった
全員が同じカードを手に入れられると、「レアを持っている人が勝つ」ことがなくなります。そのかわりに作りやすくなったのが、プレイヤー同士で戦わないカードゲームです。
2011年のThe Lord of the Rings: The Card Game(小説『指輪物語』のカードゲーム)は、プレイヤーが敵同士ではありません。1〜2人(基本セットを2つ使えば4人まで)が協力して、ゲームが用意した敵のデッキと戦います。拡張パックには、新しいカードと一緒に、物語の続きの「場面」が入っています。
2016年のArkham Horror: The Card Game(怪奇小説の世界で謎を追うカードゲーム)も協力型で、いくつもの場面をつなげて1つの物語を遊ぶ「キャンペーン」が中心です。日本ではアークライトが日本語版を出しています。
物語を遊ぶゲームでは、全員が同じ場面を同じ順で遊べることが大切です。中身が決まっているLCGは、この遊び方と相性がよかったのです。
LCGの弱点:新作が止まると、ゲームも止まる
LCGは、定期的に新しいパックが出ることで「生きて」います。逆にいえば、新作が止まると、そこでゲームは終わってしまいます。
Android: Netrunnerは、2018年に、元のゲームの権利を持つウィザーズ・オブ・ザ・コーストとの契約が終わり、新しいパックが出なくなりました。それでも遊ぶ人たちは手放しませんでした。2019年から、遊ぶ人たちが作ったNull Signal Gamesが、同じルールで遊べる新しいカードと公式の大会を引き継いでいます。
また、「LCG」はFantasy Flight Gamesの登録商標なので、ほかの会社は同じ売り方でも別の名前を使います。2015年にアッパーデック社がVs. System(アメコミのヒーローのカードゲーム)をランダムでない売り方で出し直したときは、「2PCG(2人用カードゲーム)」と名乗りました。同じ売り方のゲームをまとめて「ECG(エクスパンダブル・カードゲーム、拡張できるカードゲーム)」と呼ぶこともあります。
モンコレLCGの「L」は「Limited」
1997年に生まれた日本のTCG、モンスター・コレクションは、30周年にあたる2027年の夏に『モンスター・コレクションLCG』として生まれ変わる予定です。正式な名前は「モンスター・コレクション リミテッド・カードゲーム」で、Fantasy Flight GamesのLCG(リビングカードゲーム)とは別の言葉です。2026年12月にはクラウドファンディングを始める予定です。
ランダムなパックで売るのか、中身の決まった箱で売るのかは、2026年10月時点ではまだ発表されていません。
『背界の旅団』はTCGの側
私が制作した『背界の旅団』は、パックの中身がランダムなので、TCGの側です。カードには●コモン・■アンコモン・★レア・☘極レアの4つのレア度があります。
ただし、TCGの弱点の「出費の上限が見えない」を小さくする仕組みを入れています。パックは毎日無料で開けられ、出る確率はアプリの中で公開しています。パックを開けるたびにポイントがたまり、持っていないカードを1枚ずつ選んで手に入れられます。プレイヤー同士でカードを交換・売買する機能はありません。
まとめ:TCGとLCGの違い
| くらべる点 | TCG | LCG |
|---|---|---|
| パックの中身 | 開けるまで分からない | 決まっている |
| レア度 | ある(出にくいカードがある) | ない(全カードを同じ数ずつ入れる) |
| 欲しいカードの手に入れ方 | たくさん開ける・交換する・1枚ずつ買う | そのカードが入った箱を買う |
| 楽しさの中心 | 開封のどきどき、集める・見せ合う | デッキを考える、物語を遊ぶ |
| 得意な遊び方 | 1対1の対戦 | 対戦に加え、協力・物語 |
| 始まり | 1993年 マジック:ザ・ギャザリング | 2007〜2008年 A Game of Thrones・Call of Cthulhu |
| 名前 | 誰でも使える一般の言葉 | Fantasy Flight Gamesの登録商標 |
TCGとLCGの違いは、ルールではなく売り方にあります。けれど売り方が変わると、カードを手に入れる楽しさから、デッキを考える楽しさと物語を遊ぶ楽しさへ、ゲームの重心まで動きました。
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