最初のマジック:ザ・ギャザリングのパックは15枚で、レアは1枚だけでした。
作った側は、強いレアは数が少ないので、みんなそれほど集められないと考えていました。
そして1998年まで、カードを見ただけではレアかどうかが分かりませんでした。
カードゲームのパックを開けると、ほとんどはよく見るカードで、ときどき光る1枚が混ざっています。強いカードや目を引くカードほど出にくい。今では当たり前のこの仕組みは、誰が、何のために作ったのでしょうか。そして「どのくらいの確率で出るのか」を見せる決まりは、どこから来たのでしょうか。
この記事で分かること
- レア度は印刷の枚数から始まった:最初のレアは「刷る数が少ないカード」で、種類の数ではレアがいちばん多い組でした。
- 今のレア度は強さだけで決めない:分かりやすさ、対戦のバランス、世界の中での珍しさまで考えて、どの段に置くかを決めています。
- 確率を見せる決まりは、おまけの禁止から:絵柄をそろえると景品がもらえる「カード合わせ」の禁止が、スマホゲームの確率表示までつながっています。
レア度は「刷る枚数」から始まった
最初のトレーディングカードゲーム(パックを買ってカードを集め、自分で選んだ束で対戦するカードゲーム)とされるのが、アメリカのマジック:ザ・ギャザリング(マジック)です。数学者のリチャード・ガーフィールドが作り、1993年8月5日にウィザーズ・オブ・ザ・コースト社が発売しました。
最初のセット「リミテッド・エディション」の通称アルファ版で、パックは15枚。中身はレア1枚、アンコモン3枚、コモン11枚でした。カードはコモン、アンコモン、レアの3つの段に分けられ、段が上がるほど刷られる枚数が少なくなります。レア度とは、もともと「そのカードがどれだけ刷られたか」の違いだったのです。
面白いのは、カードの種類の数です。アルファ版の295種のうち、コモンは74種、アンコモンは95種、レアは116種でした。種類ではレアがいちばん多いのに、パックに入るのは1枚だけ。だから1種類ごとのレアは、なかなか手に入りません。
作った側は「強いレアは集まらない」と考えていた
アルファ版の約260万枚はすぐに売り切れ、同じ年の秋に出た次の版もすぐに売り切れました。
マジックの開発に長く関わるマーク・ローズウォーターは、当時の作り手の考えをこう振り返っています。強いレアは数が少ないので、遊ぶ人はそれほど多くは集められないだろう。一人が使う金額も、30〜50ドルほどと見込んでいました。
ところが実際には、何百ドルも使って、強いレアを何枚もそろえる人が現れました。レアの少なさが強さの釣り合いを取ってくれる、という読みは外れたのです。アルファ版の強いレアの代表「ブラック・ロータス」は、2024年に1枚300万ドルで売れたことがあります。出にくいカードは、遊ぶ道具であると同時に、集める宝物にもなりました。
レア度が、目に見える段になった
カードを見ても、レアとは分からなかった
初めのころのマジックには、カードにレア度の印がありませんでした。カードの段が見て分かるようになったのは、1998年6月に出たセット「エクソダス」からです。カードの絵の下、右端にある、どのセットのカードかを示す小さな印(エキスパンション・シンボル)を色分けし、黒がコモン、銀がアンコモン、金がレアになりました。
日本で1996年10月20日に発売され、初の本格的な国産のトレーディングカードゲームとされるポケモンカードゲームは、早くから印でレア度を示していました。初期のカードでは、●がコモン、◆がアンコモン、★がレアにあたります。マークの形を見れば、手に入れたカードがどれだけ珍しいかがすぐに分かる。この見せ方は、今の多くのカードゲームに受け継がれています。
神話レア:レアの上に、もう一段
2008年10月、マジックはセット「アラーラの断片」で、レアの上に「神話レア」という4つ目の段を作りました。印の色は赤みがかった橙色です。神話レアは、平均でパック8つのうち1つで、レアの代わりに入ります。
このセットには、レアが53種、神話レアが15種ありました。神話レアは種類が少ないうえに、レアの枠を8回に1回しか取れません。パックを開けて神話レアが出たときの驚きを、はっきりした段として作ったのです。
今のレア度は、強さだけでは決めていない
では「強いカードほどレア」なのでしょうか。2018年にローズウォーターは、カードをどの段に置くかを決める考え方を詳しく説明しています。強さはその一つにすぎません。要点をまとめると、次のようになります。
- 分かりやすさ:読んで分かりにくいカードや、場の様子を見えにくくするカードは、上の段へ上げます。初めての人が最初に触れるコモンは、すっきり読めることが大事です。
- パックを開けて遊ぶ対戦:その場で開けたパックで組む対戦(リミテッド)を成り立たせるカードは下の段へ。一枚で勝負を決めてしまうカードは上の段へ置き、何度も出会わないようにします。
- 効果の大きさ:効果が大きいほど上の段になり、いちばん大きな効果は神話レアに置かれます。
- 世界の中での珍しさ:その世界でありふれたものはコモンに、伝説の人物やただ一つの宝物は神話レアに置きます。
- 見た目の派手さ:開けたときに歓声が上がるような派手なカードは、上の段へ寄せます。
つまり、レア度は「強いから出にくい」のではありません。初めての人が困らないように、対戦が一枚で崩れないように、そして開けたときに心が動くように。いくつもの理由で、カードは段に振り分けられています。
確率を見せる決まりは、おまけの禁止から始まった
パックの中身がくじ引きのように決まる以上、「どのくらいの確率で出るのか」は買う人にとって大事な情報です。日本でこの問題につながる決まりは、意外に古くからあります。
1977年、公正取引委員会は、違う絵柄の札を集めてそろえると景品がもらえる「カード合わせ」という売り方を禁止しました。子ども向けの商品で多く使われ、そろえにくさを売る側が自由に決められるうえ、射幸心を強くあおるからです。
この古い決まりが、スマートフォンのゲームで呼び戻されます。決まったキャラクターをすべてそろえると特別な景品がもらえる有料のくじ「コンプガチャ」(コンプリートガチャ)です。消費者庁は2012年5月18日、コンプガチャはカード合わせにあたり、景品表示法で禁止されると発表し、7月1日から規制を始めました。
その後、業界も自分たちで決まりを作ります。2016年4月、日本オンラインゲーム協会は、有料のくじで出る品物の一覧と確率をはっきり示すガイドラインを始めました。同じ月にはコンピュータエンターテインメント協会(CESA)も、出る品物すべての提供割合を表示するガイドラインを発表しています。2017年12月には、AppleがApp Storeの審査ガイドラインに、ランダムに品物が出る有料の仕組みは、買う前に種類ごとの確率を示すことを加えました。
スマートフォンのカードゲームでも、たとえばポケモンカードのアプリ『Pokémon Trading Card Game Pocket』では、パックを選ぶ画面で、パックごとの提供割合を見ることができます。
レア度の移り変わり
こうして見ると、レア度は一度に決まった仕組みではなく、時代ごとに意味が足されてきました。
| はじめ | いま |
|---|---|
| 刷る枚数が少ないカード(1993年) | 分かりやすさ・対戦の釣り合い・世界の珍しさで段を決める |
| 見ても分からないレア度 | 色や記号で、ひと目で分かる段(1996年・1998年〜) |
| レアがいちばん上 | レアの上に神話レア(2008年〜) |
| 少なさで強さの釣り合いを取る | 少なさは、開けたときの驚きを作るもの |
| そろえると景品の「カード合わせ」の禁止(1977年) | コンプガチャの禁止(2012年)を経て、確率を見せる決まりへ(2016年・2017年) |
『背界の旅団』の4つの段
私が制作したカードゲーム『背界の旅団』も、カードを4つの段に分けています。コモン、アンコモン、レア、極レアです。カードの面には、●、■、★、☘の紋で段を示しています。
パックを開けて極レアの竜が出たときには、思わず声が出るような驚きがあってほしいと思っています。パックは、時間がたつと無料で届きます。詳しくは『背界の旅団』の公式サイトをご覧ください。
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