マジック:ザ・ギャザリングの「ドラフト」では、パックを開けても、自分のものにできるのは1枚だけです。
残りのカードは隣の人に渡し、反対隣から回ってきたパックから、また1枚を選びます。
そうして集めたカードで組むデッキは60枚ではなく40枚で、同じカードは当てた分だけ何枚でも入れられます。
カードゲームのパックは、ふつうは家で開けて、良いカードを手元の束に加えるものです。ところが、その場で開けたパックだけでデッキを組み、すぐに対戦する遊び方があります。マジックでは「リミテッド」と呼ばれ、パックを開けた全員が同じ数で戦う「シールド戦」と、開けたカードを回しながら取り合う「ドラフト」の2つが代表です。持っているカードの量で差がつかないこの遊び方では、なぜパックを開けること自体が遊びになるのでしょうか。
この記事で分かること
- 全員が同じ数のパックから始める:リミテッドは、未開封のパックを全員に同じ数だけ配るところから始まり、手持ちのカードの多さは関係ありません。
- ドラフトは「選ばなかったカード」が人に渡る:1枚取って残りを隣へ回すので、自分が見送ったカードは、隣の人のデッキに入ります。
- パックの中身は、この遊び方に合わせて作られている:コモンはリミテッドのデッキの骨組みになり、勝負を一枚で決めかねないカードはレアに置かれます。
先に組む「構築」と、その場で組む「リミテッド」
マジック:ザ・ギャザリング(マジック)は、1993年にアメリカで発売された、パックを買ってカードを集め、自分で選んだ束で対戦するカードゲームです。マジックの総合ルール(ゲームのすべての決まりをまとめた公式の文書)は、遊び方を大きく2つに分けています。
1つは「構築」です。手持ちのカードから、対戦の前にデッキを組んでおく遊び方で、デッキは60枚以上、同じ名前のカードは基本土地(マナを出すための基本のカード)を除いて4枚までと決まっています(総合ルール100.2a)。
もう1つが「リミテッド」です。全員が同じ数の未開封のパックを受け取り、そこから出たカードと基本土地だけでデッキを組みます。デッキは40枚以上で、同じカードは、開けたパックに入っていた分だけ入れてよいことになっています(総合ルール100.2b)。デッキに入れなかったカードは、すべて控えのカード(サイドボード)として扱われ、対戦の合間に入れ替えられます。
手元のカードが限られるので、枚数を少なめにし、同じカードの上限も外しているわけです。デッキの枚数がゲームごとにどう決められているかは、デッキはなぜ40枚・60枚?で詳しく書きました。
シールド戦:開けたパックだけで40枚を組む
リミテッドのうち、いちばん素直な形が「シールド戦」です。封をされた(シールドされた)パックをその場で開け、出たカードでデッキを組みます。
マジックの大会の決まりでは、シールド戦のパックは1人6つがすすめられています。新しいセット(同じ時期に出るカードのひとまとまり)の発売前に、販売店で先に遊べる「プレリリース」という催しも、この形です。プレリリース用の箱にはパックが6つ入っていて、店が用意する基本土地と合わせて40枚のデッキを組みます。公式の案内は、土地17枚とそれ以外のカード23枚で、色は強い2色にしぼることをすすめています。
ポケモンカードのシールド戦
ポケモンカードゲーム(ポケモンを戦わせる日本生まれのカードゲーム)にも、公式に「シールド戦」という遊び方があります。未開封の拡張パックを10〜15パックほど用意して、その場で開け、当てたカードだけでデッキを組みます。デッキは40枚ぴったりで、ふだんの60枚のデッキでは6枚置く「サイド」(相手のポケモンを倒すたびに1枚取り、全部取れば勝ちになる伏せたカード)を、4枚にして戦います。
公式の案内には、ポケモン15枚、トレーナーズ(道具や応援のカード)10枚、基本エネルギー15枚という目安や、デッキを組む時間は45分ほど、という目安まで書かれています。マジックと違うのは、ポケモンカードのシールド戦では、同じ名前のカードは4枚まで(基本エネルギーは除く)という決まりが残っていることです。そして公式の案内は、この遊び方を、初心者から上級者まで同じ条件で楽しめるものとして紹介しています。
ドラフト:1枚取って、隣へ回す
もう1つの代表が「ブースター・ドラフト」(ドラフト)です。シールド戦では自分で開けたカードがそのまま自分のものになりますが、ドラフトでは、開けたカードを卓のみんなで取り合います。
ふつうは8人で1つの卓を囲み、1人3つのパックを使います。手順はこうです。
- 全員が同時に1つ目のパックを開け、中から1枚だけを選んで自分の山に伏せます。
- 残りのカードを、裏向きのまま左隣の人に渡します。
- 右隣から回ってきたパックから、また1枚を選び、残りを左へ渡します。これをカードがなくなるまで続けます。
- 2つ目のパックは向きを逆にして右へ、3つ目のパックはまた左へ回します。
大会の決まりでは、一度山に伏せたカードはパックへ戻せません。自分が何を取ったか、何が欲しいかを、ほかの人に見せたり話したりすることも禁止です。1枚を選ぶ時間も決まっていて、パックに15枚残っているときは40秒、残りが減るほど短くなります。全部取り終えたら、取ったカードと基本土地で40枚以上のデッキを組み、同じ卓の人と戦います。
回ってくるパックを読む
ドラフトの面白さは、1枚を選ぶたびに、2つの問いに答えることにあります。いちばん強いカードを取るか、今の自分のデッキに合うカードを取るか。そして、自分が見送ったカードは、そのまま隣の人の手に渡ります。
話すことは禁じられていても、回ってくるパックは多くを語ります。たとえば、ある色の強いカードが何枚目になっても残って回ってくるなら、上流の人たちはその色をあまり取っていないのかもしれません。2つ目のパックで回す向きが逆になるので、今度は自分が見送ったカードが、反対側の人の選択を左右します。手元のカードの多さは関係なく、目の前の1枚から何を読み取り、どう組み上げるかで勝負が決まります。
パックを開ける瞬間も、家で開けるときとは意味が変わります。家で開けるパックは「何が当たったか」で終わりますが、リミテッドでは、当たったカードがその日のデッキの出発点になります。強いレアが出ればその色を中心に組みたくなり、出なければコモンの組み合わせで勝つ道を探す。開けること自体が、デッキ作りの最初の一手になっているのです。
パックの中身は、リミテッドのために作られている
リミテッドでは、パックから出たカードがそのまま試合を作ります。だからマジックの作り手は、カードをどのレア度に置くかを、リミテッドで遊んだときのことまで考えて決めています。
マジックの開発者の解説では、コモンはリミテッドのデッキの骨組みになるカードです。1試合に何枚も出てきてほしくないカードは、コモンにしません。アンコモンには、そのカードを中心にデッキを組みたくなるようなカードを置き、リミテッドで飛び抜けて強いカードはレアに置きます。強いカードが毎試合のように出てこないようにして、試合が運だけで大きく振れないようにしているのです。レア度がどう決まってきたかは、カードゲームのレア度はどう決まる?で詳しく書きました。
パックの形そのものも、この遊び方に合わせて変わってきました。マジックは2024年のセット『カルロフ邸殺人事件』から、それまで分かれていたドラフト用のパックと、開けて楽しむためのパックを、「プレイ・ブースター」という1種類にまとめました。作り手は、開けて楽しいことと、ドラフトなどのリミテッドに向いていることを、両立させる狙いを挙げています。
ドラフトとシールド戦をまとめると
| 仕組み | そこから生まれる遊び |
|---|---|
| 全員が同じ数の未開封パックから始める | 手持ちのカードの量で差がつかない |
| デッキは40枚、同じカードは当てた分だけ | 少ないカードでも、すぐにデッキが組める |
| 開けたパックだけで組む(シールド戦) | 当たったカードが、その日のデッキの出発点になる |
| 1枚取って隣へ回す(ドラフト) | 見送ったカードが人に渡り、回ってくるパックを読む |
| コモンは骨組み、強すぎるカードはレア | レアが出なくても、組み方しだいで戦える |
パックを開けることが「集める」だけで終わらず、「組む」と「戦う」の始まりになる。それが、ドラフトとシールド戦の面白さです。
パックを開けて、カードが増えていく楽しみ
私が制作したカードゲーム『背界の旅団』には、ドラフトやシールド戦の遊び方はありません。それでも、パックを開けた瞬間に「このカードで何をしようか」と考え始める楽しさは、大事にしたいと思っています。
『背界の旅団』のパックは、時間がたつと無料で届きます。開けるたびに手元のカードが増え、組めるデッキが少しずつ広がっていきます。詳しくは『背界の旅団』の公式サイトをご覧ください。
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